ホンダフリード - ギッシリ詰まったちょうどいいミニバン2代目
車名:ホンダ フリード
試乗グレード:HYBRID G Honda SENSING 4WD /6人乗り272万8200円(試乗車296万5800円)(税込)
完成度を高めたモデルチェンジ
2016年秋に登場したばかりの2代目フリード。2008年に登場した初代はコンパクトなボディに3列シートとスライドドアを備え、「最高にちょうどいいホンダ」というキャッチコピーの通り、多くの人に支持された。その初代の良さはそのままに、燃費性能の改善や室内空間のさらなる拡大、そして最新の安全運転支援システムを投入するなど、完成度を高めたキープコンセプトのモデルチェンジである。初代同様3列シートと2列シートのモデルがあり、2列シートのほうはスパイクからフリードプラスへと呼び名が変わった。
フリードは四角い箱の中に最大限のスペースと機能を盛り込んだ、ある意味でホンダらしさ満点のモデルだ。ホンダというとF1への挑戦もあって、かつてはスポーティなイメージが強かったが、エンジンなどのスペースを最小限にして居住空間の確保を図ることにも長けたメーカーである。最近はそちらのイメージが強すぎてミニバンやコンパクトカーのメーカーだと思われることを挽回したがっているという話も聞こえてくる。とはいえ低床低重心のシャシーなど詰め込む技術は素晴らしいのだから、それはそれで誇ってもいいのではないだろうか。
素晴らしく滑らかなハイブリッド、素晴らしいとは言い難い乗り心地
今回試乗に連れ出したのは、ハイブリッドに加えて四輪駆動とHonda SENSINGと名付けられた安全運転支援システムを装備した全部盛りのモデル。さすがに価格は300万円に迫る。新型フリードのベースとなった3代目フィットは、2014年の登場時にハイブリッドモデルの度重なるリコールで少々イメージを悪くしてしまった。リコールの原因はホンダらしい凝ったハイブリッドシステムのソフトウエアのバグを潰しきれなかったためだ。しかし今回試乗したフリードはハイブリッドに加えて四輪駆動まで組み込んだモデルだったが、熟成が進んだのだろう、街中でも高速道路でもとても自然な運転を楽しむことができた。
このクルマ、ハイブリッドではあるが主役はエンジンとDCTと呼ばれるツインクラッチシステムのオートマだ。発進直後はモーターのアシストを感じるが普通に走っているときはエンジンが支配する。アクセルをオフにするとエンジンがストップし、同時にクラッチが切れてモーターによる回生ブレーキが作動する。かなり複雑なことをしているが、よくここまで滑らかにできるものだと感心する。
ホンダのハイブリッドには3つの種類があり、フリードのものはモーターが一つのタイプ。以前はエンジンとモーターが直結されていたため、モーターだけの走行は出来ないに等しかったが、中間にツインクラッチシステムを入れることでその改善を図っている。燃費はもちろんガソリン車よりは良いのだけど、2つのモーターを使ったプリウスには届かない。コスト的には有利と言われていたがツインクラッチシステム(しかも社外調達の)を入れたことで、それもやや薄まっているのではないだろうか。価格の縛りが厳しいコンパクトカークラスゆえホンダの迷いを感じる。 ブレーキがとても自然なことも印象に残った。ハイブリッド車の場合、踏み始めに急激にブレーキがかかるものが多いがフリードの場合は問題ない。一方でステアリングは軽い。切り始めの部分にはもう少し手応えが欲しい。足回りはしっかりしているが、しなやかではない。山道では望外に軽快なフットワークを見せるが、街中で少々揺れる乗り心地はあまり褒められたものではない。このあたりにスペースを最優先にした素晴らしいパッケージングの影の部分が出ている。
練りこまれた使い勝手の陰に涙ぐましい努力が
ついつい走りの話題が多くなってしまったが、フリードを買う人が気にするのは室内の使い勝手やその質感であろう。室内は全長4.2mのコンパクトなボディに3列シートを組み込んでいる。正直言ってステップワゴンクラスのような余裕はないが、それでも旧型に比べて1〜3列目の間を90mm拡大し、2列目の前後スライド幅を増やすなど涙ぐましい努力を重ねている。
運転席は横方向への広がりがあるデザインがとても印象的だ。メーターやシフトレバー周りのデザインに新しさを感じる。フロントウインドウの上端が普通の車より上にあるので開放感もある。ただし太陽の高さが低い冬場だと昼間でもサンバイザーのお世話になることも多いだろう。
6人乗りの2列目にはキャプテンシートが用意され上級ミニバン気分(?)を味わうことができる。2列目と3列目シートに16通りものアレンジ方法を設定したり、スライドドアの開口幅を拡大したり、数多くの収納を設けたり、使い勝手は相当練りこまれた印象だ。
ちなみに3列目シートの格納方法は左右への跳ね上げ式。床への格納式に比べて、荷室の低さをキープできることと、3列目を使っている時でもシート下を活用できるのがメリットだが、見ての通り幅のある荷物は積みづらい。一長一短である。
ホンダらしいこだわりの詰まった2代目フリード。特に室内の使い勝手に関するこだわりはさすがだ。最新モデルらしく安全装備も抜かりない。走りには改善の余地があるが、欠点と呼ぶほどのものではない。特にヨンクモデルであれば、これ一台でお買い物から旅行・レジャーまですべて使えそうな感じが買いだろう。
ホンダフリードスペック
車名:ホンダフリード
全長4265mm(一部のフリードプラスは4295mm)×全幅1695mm×全高1710mm(4WD車は1735mm)。3列シートのフリードと2列シートのフリードプラスがあり、それぞれ1.5Lガソリンエンジン(131PS)とハイブリッド(110PSの1.5Lエンジン+29.5PSモーター)から選ぶことができる。ボディタイプ、エンジン問わず、駆動方式も無段変速のCVTのFFとツインクラッチ式ATの4WDを選べる。新車価格はフリードB(ガソリン車・FF)の188万円からフリードプラスG ホンダセンシング(ハイブリッド・4WD)の274万8200円。
ホンダフリードオススメグレードはこれ!
街乗り中心ならハイブリッド4WD、ロングドライブならホンダセンシング付きのガソリン車
トヨタシエンタが独占している、コンパクトミニバン領域に待った!を掛けるため登場したのが、ホンダフリード。ミニバンという特性上ターゲットはファミリーということになるのだろうが、家族構成や年齢によってマッチするモデルが変わってくる。まず、小さいお子さんのいる家族にはハイブリッドの4WD車がオススメだ。小さなお子さんがいるとチャイルドシートの装着はマスト。その場合、7人乗りのベンチシートより、6人乗りの独立したキャプテンシートのほうがチャイルドシートをしっかりと固定できる。しかもハイブリッドであれば、アクセルをそれほど踏まなくてもスムーズに加速し、さらに4WDならば、細かく駆動配分をしてくれるので、クルマの揺れを防いでくれる。もう一つはステップワゴン卒業組だ。お子さんが大きくなって大きなミニバンはいらないけど、お友達同士で旅行に行くというファミリーにはガソリン車のホンダセンシング付きがオススメ。ハイブリッドに比べて車両重量が軽量なこともあり、加速がさらにスムーズ。先進安全装備のホンダセンシングがあれば、長距離のドライブの疲れ方が全然違う。大きな荷室がほしいという人にはフリードをベースにクルマのある生活を豊かにしれくれるフリード+がオススメ。5人乗り仕様のフリード+は車内泊やサーフィンなどアクティブにとって便利な仕掛けがたくさんなされているからだ。ホンダフリードは先進安全装備ホンダセンシングを標準装備したこと。そしてハイブリッドミニバンで稀少な4WD車を設定していることが特徴だ。
トヨタシエンタ - ホンダフリードのライバルはこれ!
コンパクトミニバンのトップセラー
コンパクトミニバンで圧倒的なシェアを誇っているトヨタシエンタ。全長約4.2mというコンパクトなボディに3列シートをレイアウトした優れたパッケージングが人気の秘訣だ。リアには便利な両側スライドドアを採用。サードシートは必要のない時はセカンドシートの下に収納できる点が跳ね上げ式のフリードとは異なる。普段は5人乗りのたっぷりとしたラゲージスペースを確保したハイトワゴンとして使用できる。
エンジンは1.5Lガソリンとハイブリッド車を設定。この点ではフリードと同じだが、シエンタにはハイブリッドの4WD車の設定がない。しかし、6人乗りと7人乗りで価格の異なるフリードに対して、シエンタは装備の充実した上級グレードのGならば、同じ値段で2つの仕様が選べるなどどちらにも魅力がある。ワンタッチスイッチ付きの助手席パワースライドドアが装備されるなど利便性は高いが、安全装備ではフリードにかなり差をつけられている。シエンタに設定されているトヨタセーフティセンスCではアクセルとブレーキを間違えて操作した際に制御してくれないのだ。これから長い時間を過ごすパートナーとしては少々不満といえる。
トヨタシエンタスペック
車名:トヨタシエンタ
全長4235 mm×全幅1695mm×全高1675mm(4WD車は1695mm)搭載するエンジンは1.5Lガソリンと1.5Lガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムの2種類。駆動方式はガソリン車がFFと4WD、ハイブリッド車はFFのみで、新車価格はXVパッケージの168万970円〜ハイブリッドGの232万9855円。
日産ラフェスタハイウェイスター - ミニバンとは思えない走行性能が魅力
もう1台ホンダフリードのライバルとして、取り上げたのが日産ラフェスタハイウェイスター。リアに両側スライドドアを採用している点は共通だが、ラフェスタハイウェイスターは全長が4.6mほどあり、搭載するエンジンも2Lと車格そして価格面でも1クラス上のクルマだ。
この日産ラフェスタハイウェイスターはマツダプレマシーのOEM供給車で、とにかく一般的なミニバンとは一線を画す高い走行性能が魅力だ。特に高速道路での走行安定性は抜群。それもそのはず、このプレマシーには後に登場するマツダの新世代技術群であるスカイアクティブテクノロジーのエッセンスが導入されているからだ。それほど、人気は高くないため、新車を購入する際にかなりバリューがあると思われる。人気以上に高い実力をもつのが日産ラフェスタハイウェイスターだ。ちなみにマツダはミニバンからの撤退を表明している。走りのミニバンを買うなら今が最後のチャンスかもしれない。
日産ラフェスタハイウェイスタースペック
車名:日産ラフェスタハイウェイスター
全長4615mm×全幅1750mm×全高1615mm(4WD車は1650mm)。搭載する2Lガソリンエンジンは駆動方式によって異なり、FF車には高効率の2L直噴エンジンを搭載。6速ATと組み合わせることで、151psの高出力と16.2km/Lとおい低燃費を両立。4WD車には139psを発生する2Lガソリンエンジンと4速ATが組み合わされる。新車価格はハイウェイスターの230万3640円からハイウェイスターFスプレモの270万円。
今回試乗した車はこちら
4WD HYBRID 1500 G Honda SENSING 6人乗り |
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