人気車種 試乗&ライバルチェックVol.13
トヨタ カローラツーリング
(2020.4)
▽ 欧州車に負けないステーションワゴン
▼ 先代はヴィッツベースだった
▼ 3ナンバーになったものの日本用に細かい配慮
▼ 貴重なCセグメントの国産ステーションワゴン
▼ 上質で豊かな気持ちになるインテリア
▼ 街中、高速を問わず良好な走りのリズム
▼ リニアなステアリング特性、長距離ドライブに耐える乗り心地
▼ 太く薄いタイヤは必要なのか?
▼ 最新の安全装備、まともな値段になった誤発進抑制装置
▼ スマホ派にはうってつけのディスプレイオーディオだが
▼ 無料機能だけでも価値のあるコネクティッド
▼ 10年以上経って、隅々まで「いいクルマ」になった
▼ オススメグレードはこれ!
▽ ライバルはこれ!
▼ ホンダシャトル
▼ スバルレヴォーグ
欧州車に負けないステーションワゴン
試乗グレード
HYBRID W×B・1.8Lガソリンハイブリッド・FF(ホワイトパールクリスタルシャイン)
279万9500円(試乗車332万6026円)(税込)
トヨタを代表する車種、カローラが12代目へと進化した。先行して2018年6月にハッチバックモデルのカローラスポーツが発売されていたが、2019年9月にセダンとステーションモデルも新型に切り替わった。保守的だった先代モデルに比べ、12代目は若返りを図った大胆なスタイリングや最新のコネクティッド機能など注目すべきポイントが多い。販売台数も身内の伏兵・ライズにいったん首位を奪われたものの、3月はトップに返り咲くなど好調だ。今回はそんなカローラのステーションワゴンモデル、カローラツーリングを試乗に連れ出してみた。
先代はヴィッツベースだった
カローラはトヨタ、いや日本、いや世界を代表するクルマの一つだ。1966年の発売以来、累計販売台数の世界記録を更新し続けている。
カローラがいまだに世界中で売れている理由の一つは、販売する国に合わせて仕様を変えている点だ。日本で販売されていた10代目と11代目のカローラは、グローバルモデルとシャシーからして異なっていた。本来、カローラはVWゴルフなどと同じ欧州Cセグメントのクルマであるが、「日本仕様カローラ」は一回り小さなBセグメントのヴィッツベース、安物で法人向けという印象が付きまとっていたことは正直否めなかった。
3ナンバーになったものの日本用に細かい配慮
今回の12代目は日本仕様もグローバルと基本は同じシャシーとなり、セダンはアクシオという名称が外れ(アクシオはグレードを整理して継続販売中)、ステーションワゴンはフィールダーからツーリングへと名称変更された。
基本は、と書いたのは日本仕様のセダンとツーリングはボディサイズがグローバルモデルより少し小さいからだ。全長 4,495 mm x 全幅 1,745 mm x 全高 1,460 mm(セダンは1,435mm)というカローラツーリングのボディは、旧モデルのカローラフィールダーの全長 4,400 mm x 全幅 1,695 mm x 全高 1,475-1,500 mm(アクシオは1,460mm)に比べて特に幅が大きくなり、3ナンバーサイズとなった。
しかしグローバルモデルに比べれば全長で150mm、全幅は45mm短い。ちなみにホイールベースも60mm短縮されるなど、小手先ではなくちゃんとサイズダウンを図っている。ちなみにカローラスポーツはグローバルと共通サイズである。
貴重なCセグメントの国産ステーションワゴン
グローバル、特に欧州ではVWゴルフヴァリアント(全長 4,575-4,595 mm x 全幅 1,800 mm x 全高 1,465-1,485 mm)を筆頭にこのクラスのステーションワゴンモデルが豊富に揃う。しかし国産ステーションワゴンに目を向けると全長4.5m前後のモデルはわずかにホンダのシャトル(全長 4,440 mm x 全幅 1,695 mm x 全高 1,545-1,570 mm)があるのみだ。あとは少し大きいホンダジェイド(全長 4,660 mm x 全幅 1,775 mm x 全高 1,530-1,540 mm)、モデルチェンジが近いスバルレヴォーグ(全長 4,690 mm x 全幅 1,780 mm x 全高 1,490-1,500 mm)あたりだろうか。いつのまにかミニバンに押されて国産ステーションワゴンはずいぶん減ってしまった。
やや実用性重視のシャトルに比べると、カローラツーリングはゴルフヴァリアントなどと同じく、伝統的でスポーティなステーションワゴンのスタイルをもつ。個性的なフロントマスクに好き嫌いは分かれそうだが、見た目の品質感もとても高く、先代のように法人用のバンと思われてしまう危険性は低い。
全高や全幅に制限のある都市部の駐車場で使いやすいサイズ、そして新鮮なスタイリングを持つカローラツーリングなら、輸入車を選ばざるを得なかった都会の「お洒落さん」に多少なりともアピールするだろう。
上質で豊かな気持ちになるインテリア
インテリアもCセグメントの輸入車ステーションワゴンと遜色のない品質感、プライベート感を持っている。特にダッシュボードのデザインはなかなかどうして悪くない。試乗車が最上級グレードだということを差し引いても、シートやステアリング、アームレストなど手に触れる部分は表面がソフトタッチな素材で構成されており、とても上質な印象を受ける。
室内の広さもコンパクトカーに比べて当然ゆとりがある。セダンと全長は変わらないものの、ラゲッジルームの容量も十分だ。ラゲッジのトリムはリアホイールより後方の左右がえぐられており、この部分であればゴルフバックの横積みが可能なのは国産車らしいポイントである。
細かな部分では運転席と助手席の間にあるアームレストが前後可動式である点を高く評価したい。長距離ドライブにアームレストは欠かせないものだが、ドリンクホルダーなどの兼ね合いで長さが足りないクルマは多い。
スイッチの操作感、仕上げなども良い。特にパナソニックが誇るナノイーが内蔵されたエアコンの、穏やかな風の出し方には国産車らしい気配りを感じる。
一方で、オートワイパー、バニティーミラーの照明、パワーシートなど、国産車の上級グレードなら付いていそうな装備がなかったりする。パワーウインドウのAUTOも運転席のみだ。このあたりには質実剛健なグローバルカーの影が見え隠れしている。
2日間ほどカローラツーリングと過ごしたが、インテリアで気に障るような点はなく、どこかほんのりと豊かさすら感じた。室内のあちらこちらにコストダウンを隠しきれなかったカローラフィールダーとは別次元のクルマである。
街中、高速を問わず良好な走りのリズム
今回の試乗車はプリウスなどと同じ1.8Lエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドモデルだ。トヨタのハイブリッドのなかではダイナミックフォースエンジンを搭載したカムリやRAV4などが最新バージョンで、カローラツーリングのものは改良されているとはいえ、少し前の設計のものである。
ダイナミックフォースエンジンと組み合わされた最新のトヨタハイブリッドモデルのダイレクト感のある走りは素晴らしい。しかしカローラツーリングのハイブリッドもなかなかのものだ。特にアクセルの踏み始めから半分くらいまでの反応の良さ、ダイレクト感はダイナミックフォースエンジン搭載モデルとほぼ同等である。アクセルを踏み込んでいった時の加速感にややルーズさを感じる場面はあるものの、街中、高速道路を問わず走りのリズムはとても良い。
以前のハイブリッドモデルに比べてモーターの存在感が増しており、エンジンの介入も非常にスムーズな点も、このシステムの熟成ぶりを物語っている。ブレーキの減速感も十分でフットワークの良さに貢献しているが、踏み始めと停止直前にやや過敏で扱いづらさを感じた。この部分は少し先祖返りした印象だ。
ちなみに市街地と高速道路半々だった試乗中のトータル燃費は燃費計によれば21.5km/L。渋滞気味の街中での燃費の良さはトヨタのハイブリッドの美点だったが、カローラにしろRAV4にしろ、最近試したトヨタハイブリッドは速度を問わず好燃費を維持するようになった。
リニアなステアリング特性、長距離ドライブに耐える乗り心地
TNGAになってからトヨタ車の足回りはずいぶん良くなった。カローラツーリングもステアリング特性はタウンスピードから80kmあたりまでならリニアでステアリングの手応えも良好だ。車体の姿勢変化が少なく、また挙動も穏やかなのでワインディングも良いリズムで駆け抜けることができる。これには前述のアクセルへのトルクのツキの良さも貢献している。
一方、80km以上だとステアリングセンターの戻しがやや弱い点は気になった。その速度域だとステアリングも切れすぎる感がある。後述するタイヤの影響もあるかもしれないが、もう少し直進性はビシッとしてほしい。念のため車線維持システムのLTA(レーントレースアシスト)を切ってもセンターの印象は変わらなかった。
低速域から実感できるフラット感と穏やかな揺れの収束で乗り心地にも上質感がある。タイヤの空気圧が高いのかと疑うほど細かな振動が入ってきたフィールダーとはここでも大差が付く。以前のトヨタ車が苦手だった80km/h以上の速度域でもその印象は変わらない。長距離ドライブに連れ出したくなる足回りは欧州Cセグメントのライバルたちに混じってもいい勝負になりそうだ。
太く薄いタイヤは必要なのか?
誉めることの多いカローラツーリングの足回りだが、ロードノイズの大きさは問題だ。ラゲッジまで室内空間となるワゴンモデルということもあるが、走り始めた瞬間から路面の舗装状態が悪いのかと思うほど、ロードノイズが気になった。試乗車にはヨコハマ製の215/45R17という薄いタイヤが装着されていた。この薄いタイヤで乗り心地の良さを確保しているのは評価に値するが、ロードノイズや直進性の面で不利なタイヤサイズであることは間違いない。
15インチモデルでは5.0mと素晴らしい小回り性能を発揮するのに、16インチや17インチタイヤを履く上級グレードではそれも5.3mとなってしまう。「消費者が見た目を重視する」という理由を、トヨタに限らずどのメーカーも大径ホイールと薄いタイヤの言い訳にするが、いつまで続けるのであろうか。
最新の安全装備、まともな値段になった誤発進抑制装置
カローラツーリングは最新モデルらしく先進安全装備やコネクテッド機能が充実している。アルファード/ヴェルファイアのマイナーチェンジモデルから採用が始まった第二世代の「トヨタセーフティセンス」、その自動(被害軽減)ブレーキの対応能力の高さは最先端のものだ。ACCも一部グレードを除いて全車速追従タイプとなる。トヨタらしくやや前車との間隔を開き気味なきらいはあるものの、加速・減速の制御自体は非常に洗練されている。ただし二輪車への反応は鈍く、車線変更時に先行車を見極められていないと思えることもあった。このあたりは経験が豊富なスバルのアイサイトよりも一段落ちるかなというのが率直な感想だ。
カローラスポーツが登場した時は、誤発進抑制機能を担当するインテリジェントクリアランスソナーが全車10万円以上のセットオプションだったことに驚いたが、カローラとカローラツーリングでは多くのグレードで標準装備となり、オプション装着も単独で3万円弱となった(カローラスポーツも同じタイミングで同様に変更された)。このあたりの改善の速さは最近のトヨタの良いところだ。
スマホ派にはうってつけのディスプレイオーディオだが
国内のトヨタ初となる注目装備がスマートフォンとの連携が可能なディスプレイオーディオ(DA)である。全車に7インチディスプレイが標準装備され、上級モデルは+3万円弱で写真の9インチにアップグレードが可能だ。社外ナビを設置したい人向けのオーディオレス仕様は用意されていない。
自分のスマホと接続することでディスプレイ上の操作でスマホのナビや音楽を楽しむことができるのがウリのDAは、特に「Apple CarPlay」もしくは「Android Auto」を使うには最適だ。しかし、Apple CarPlayやAndroid Autoを使うには別途3万3000円のフルセグTVとのセットオプションを申し込む必要がある。
トヨタが無料で提供する「SmartDeviceLink」をインストールすれば、提携するナビソフトなどを使えるが、現在のところSmartDeviceLinkは対応アプリの少なさや操作性の点で評判があまり芳しくない。
Apple CarPlayやAndroid Autoは確かに便利だが、スマホアプリはナビの性能や精度では車載専用品にまだまだ敵わない。その点を見越したのか+6.6万円でエントリーナビが、11万円出せば多機能なT-Connectナビが用意されている。
音楽についてもAUX端子などは用意がなくUSBのみの接続となる。PCからUSBメモリーに落とすか、スマホを利用するのであれば問題ないが、CDやDVDのオプションがないことには注意が必要である。カローラのDAは画面の解像度も今ひとつ。社外ナビの標準レベルに達していないので、過剰な期待はしないほうがいいだろう。
スマホにすべてを集約している人には便利なDAではあるが、ナビや音楽にこだわりがある人には不満を感じる部分が現状は散見される。カローラ以降も積極的にDAを展開するトヨタ、コネクティッドでの主導権を握りたいということなのだろうが、まだ十分な利便性を提供できているとは言い難い。
無料機能だけでも価値のあるコネクティッド
コネクティッドカーを標榜するカローラにはDA以外にも全車DCMと呼ぶ専用通信機が搭載され、新車から5年間は基本機能が無料で利用できる。エアバッグの作動や警告灯の点灯と連動してオペレーターとつながるサービスや、ドアロックをスマホでリモート操作できるなど、基本機能でもなかなか価値は高い。専任のオペレーターがリクエストに答えてホテルやレストランなどの予約まで行ってくれるサービスなどは有料なうえにT-Connectナビの装着が前提となるものもある。
10年以上経って、隅々まで「いいクルマ」になった
ミニバンやSUVが全盛の陰で、ステーションワゴンはその居場所を見出せない状況が日本では続いている。ただ、駐車場に制約が多く、そしてお洒落さんの多い都市部においては、欧州車のステーションワゴンにも一定のニーズがある。アウトドアなどの趣味は持ちつつも、ミニバンやSUVの大きさに過剰感を持つ人にもステーションワゴンは向いている。
今回のカローラツーリングは欧州のライバルたちと互角以上に戦える力を持ったクルマだ。豊田章男社長が「もっといいクルマをつくろうよ」と言い続けたことが、10年以上経って表面だけでなく製品の隅々にまで行き渡ってきた、そんな印象を強く受けた。
(文:馬弓良輔、写真:萩原文博)
トヨタ カローラツーリングのオススメグレードはこれ!
スタイリングにマッチした スポーティな走りのW×B
トヨタカローラツーリングに搭載されているパワートレインは、1.8Lガソリンエンジン+CVT、1.2Lガソリンターボエンジン+6速MT、そして1.8Lハイブリッドシステム+CVTの3種類が用意される。駆動方式は2WD(FF)を中心にハイブリッド車のみにE-Fourと呼ばれる4WD車を設定しており、4WDを求める降雪地のユーザーは必然的にハイブリッド車を選択することになる。
グレード構成はガソリン車、ハイブリッド車ともにベーシックなG-X、装備の充実したS、スポーティなW×Bの3グレードを設定。カタログスペック上の燃費性能では、1.8Lガソリンエンジンは14.6km/L(WLTCモード)、ハイブリッド車は24.4〜29.0km/L(WLTCモード)で同じ2WD車であれば、倍近く走行する。しかし、新車価格は同じW×Bで比べると約43万4500円ハイブリッド車に免税効果があるとしても、差額分を取り戻すのはかなり厳しい。バランスを考えると1.8Lガソリン車のW×Bがオススメグレードだ
トヨタ カローラツーリングのライバルはこれ!
ハイブリッドW×B |
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ホンダセンシング |
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スポーツ アイサイト |
ホンダシャトル - 数少ない5ナンバーサイズワゴン
トヨタカローラツーリングのライバルとして、まず取り上げたいのがホンダシャトル。カローラツーリングの前身であるカローラフィールダーの時代からライバルだったモデルだ。旧型フィットをベースとしているため、5ナンバーサイズの取り回ししやすいボディが魅力。また、全高が高めなこともあり荷室容量は5人乗車時で570L、リアシートを全て倒すと最大1141Lまで拡大する。
シャトルに搭載されているパワートレインは1.5L直4ガソリンエンジンと1.5Lガソリンエンジン+1モーターのハイブリッドシステムの2種類。ミッションはガソリン車がCVT、ハイブリッドが7速DCTで、駆動方式は全グレードに2WD(FF)と4WDが用意され、ハイブリッド車でも4WD車を選ぶことができる。燃費性能はWLTCモードで17.2〜25.2km/Lと水準以上の燃費性能を発揮し、価格面でもリーズナブルなのがシャトルの魅力だ。
ホンダシャトルスペック
ボディサイズは全長4440mm×全幅1695mm×全高1545mm。搭載するパワートレインは最高出力129ps、最大トルク153Nmを発生する1.5L直列4気筒DOHC、そして最高出力110psの1.5Lガソリンエンジンと最高出力29.5psを発生するモーターを組み合わせたハイブリッドシステムの2種類。駆動方式は全グレードで2WD(FF)と4WDを設定している。新車価格はGホンダセンシング 2WD車の180万8400円〜ハイブリッドZホンダセンシング 4WD車の277万2000円となっている。
スバルレヴォーグ - 全車ターボエンジンを搭載する快速ワゴン
カローラツーリングのライバル車としてもう1台取り上げるのがスバルレヴォーグだ。2019年に開催された東京モーターショーで次期モデルが発表されているが、レガシィツーリングワゴンの伝統を継ぐモデルとして高い走行性能が特徴のステーションワゴンだ。今回紹介する3台の中では最もボディサイズが大きいが、サスペンションにビルシュタイン製のショックアブソーバーを採用するなど、快速ワゴンの名に相応しいグランドツーリング性能を持つ。
搭載しているエンジンは、最高出力300psを発生する2L水平対向ターボエンジン、そして最高出力170psを発生する1.6L水平対向エンジンの2種類で、全モデル過給器付きエンジンを搭載している。組み合わされるミッションはCVT、駆動方式も4WDのみとシンプル。燃費性能は13.2〜16.0km/Lとスポーツワゴンと考えると及第点と言える数値だ。最新の運転支援システム、アイサイトver.3を搭載し、走行性能だけでなく、クラストップの安全性能の高さも魅力。
スバルレヴォーグスペック
ボディサイズ全長4690mm×全幅1780mm×全高1490mm。搭載するエンジンは1.6L、2Lともに水平対向4気筒ターボで、リニアトロニックと呼ばれるスバル独自のCVTが組み合わされる。駆動方式は全車4WDのみで、新車価格は1.6GTアイサイトの291万5000円から2.0STIスポーツアイサイトの412万5000円とカローラツーリングより大体100万円高くなっている。