人気車種 試乗&ライバルチェックVol.9
スバル フォレスター
VS CR-V&CX-5
(2019.1)▽ 知的なアメリカ、おおらかなアメリカ
▼ いまやスバルの屋台骨
▼ 強く働く北米市場の意向
▼ 派手になったインテリア
▼ さすがの余裕を誇る室内空間
▼ e-BOXERはスバルらしからぬ大人の走り
▼ 色々な意味でスバルらしいのはX-BREAK
▼ 先進のアイサイトはさすが! だが、しかし…
▼ これもアメリカ、それもアメリカ
▼ オススメグレードはこれ!
▽ ライバルはこれ!
▼ ホンダ CR-V
▼ マツダ CX-5
知的なアメリカ、おおらかなアメリカ
試乗グレード:
X-BREAK 2.5L・マニュアルモード付きCVT・4WD(クリスタルホワイト・パール)294万8400円(試乗車322万9200円)(税込)
Advance 2.0L+モーター・マニュアルモード付きCVT・4WD(ダークブルー・パール)309万9600円(試乗車343万4400円)(税込)
2018年6月、スバルのミドルクラスSUV「フォレスター」が5代目へと進化した。日本以上に北米で支持され、スバルの世界販売を支えるフォレスター。外観の印象はあまり変わっていないが、その中身の進化はどうなのだろう。よりアクティブ感を打ち出したX-BREAKとハイブリッドの最上級グレード・Advanceの試乗レポートをお届けしよう。
いまやスバルの屋台骨
もともと4WD(スバルはAWDと呼ぶが)のラインナップの多いスバル車のなかで、歴代のフォレスターはオフロード向けのSUVとして位置づけられてきた。豊かな最低地上高やしっかりした四駆システムもそうだが、何よりSUV専用ボディがそれを象徴しているだろう。
インプレッサをベースにしたXVや、セダンとボディを共用するアウトバックに比べて、フォレスターが独自の存在感を放っているのは、やはりこの外観のデザインによるところが大きい(もっとも最近のアウトバックはアウトバックありきで設計している感も強いが)。
強く働く北米市場の意向
そんなフォレスターは、スバルの全世界販売の6割以上を占める北米でアウトバックと並ぶほどの販売台数を叩き出しており、いまやスバルの最重要車種に育った。4代目のキープコンセプトである外観も、細部を見るにつれ「北米色」をますます強めたと感じる。
日本では初代や2代目のフォレスター、特にターボモデルのスマッシュヒットの残像がいまだ濃く残っているが、今回の新型にターボモデルの設定はない。主力は2.5Lエンジン、それと最上級グレードのAdvanceに設定された2.0L+モーターのハイブリッドの2種類のみ。ハイブリッドといってもモータの出力は小さく、いわゆるストロングハイブリッド車でないことは、これまで通りだ。
このエンジン構成にもフォレスターが北米にアジャストしたクルマであることを強く伺わせる。
派手になったインテリア
最初に試乗したのはスバルが「e-BOXER」と呼ぶ、2.0Lエンジン+モータのAdvanceだ。オプションの革シート仕様だったこともあり、よりマッシブになった外観のデザイン同様、室内もなかなか派手な感じだ。
スバル車といえばダッシュボード周辺の素材感がバラバラで、それゆえ質感を損ねている印象があったが、そのあたりはだいぶ改善された。ただ、ハリアーやCX-5あたりと比べるとまだまだ雑な部分が見受けられるのは否めない。
さすがの余裕を誇る室内空間
室内空間の広さ自体はなかなかなものだ。特に左右幅に余裕があるので、かなりのロングドライブに耐えるだろう。ただし見た目のかっこいい革シートは座面が少々薄いのか、1時間もたたないうちにお尻が痺れてきたのは残念だった。
リアシートは明確にフロントより1段高い位置にあり、それでも高い車高の恩恵でヘッドクリアランスは十分確保されている。ミニバンほど過剰な高さではなく適切な余裕を持った高さが、これまたロングドライブに向いている。
さすがにこのクラスになるとラゲッジスペースは十分だ。ホイールベースの張り出しも少なく、趣味の道具や旅行の荷物を運ぶのに十分な容量を確保している。
e-BOXERはスバルらしからぬ大人の走り
走り出してみると、とにかく静かなことに驚いた。アクセルペダルを踏み込んでも、むやみにエンジン回転が上がらず、大人っぽいスムーズな加速をみせる。走りに大人っぽさを感じるのは、インプレッサから導入された新しいシャシー「SUBARU GLOBAL PLATFORM」が、足回りからの音をよく遮断していることも貢献している。
インプレッサがそうだったように、新シャシーを導入したフォレスターの足回りは、ステアリングを切り込んでいった時のハナの入りが素晴らしく良い。そして80km/hまでという限定付きだが、フラット感のある乗り心地も素敵だ。旧型に比べて車格がワンランクアップしたような印象を受けた。
スバルらしからぬ(?)品の良い走りを披露したAdvanceだが、しかしまだ満点というわけではない。低速域での細かい制御に粗さというか、ややギクシャク感が残っている点と、ブレーキの効きがリニアさに欠けること、そして高速域でのステアリングセンターの落ち着きのなさは、今後の改良に期待したい。
色々な意味でスバルらしいのはX-BREAK
続いてもう一台のX-BREAKは、最近流行りのクロスオーバー感をより強めたデザインが特徴だ。随所にオレンジ色のアクセントが施されているあたり、なんとなく三菱のアクティブギアシリーズと似ている。
「若者」アピールのために定着しつつある手法なのかもしれないが、そのわりにこの手のクルマに若い人が乗っているのを目にしないのはなぜだろう。むしろGショック好きな人向けと言われた方が腹落ちする。
内装もシートやダッシュボード周りにオレンジ色の加飾が施されていて、Advanceとはずいぶん印象が異なっている。これをアクティブと捉えるか、落ち着かないと感じるかは、その人次第だ。
ただ、こちらの方がAdvanceのような「雑な感じ」は薄まっている気もするが、それは配色の煌びやかさにごまかされているのかもしれない。
2.5Lエンジンの走りは「e-BOXER」のそれとはずいぶん異なっている。軽く踏んでいるのにグワッとアクセルが開いて加速する、昔ながらのスバル車だ。エンジン音もけっこう車内に入ってくる。トルクやパワーは明確にe-BOXERより上手だが、ラフで大味な乗り味が特に低速域で目立つ。
中間加速や高速での追い抜きでは、レスポンス良く反応するエンジンとCVTの相性の良さを感じるが、街中ではビックエンジンのトルコンATのようだ。よく言えばおおらか、悪く言えばルーズなフィーリングである。
それからX-BREAKは特製の17インチ60扁平のBSエコピアを履いていたのだが、このタイヤは荒れた路面でずっと続く高周波数のノイズが気になった。Advanceの18インチ55扁平のBSデューラーが、静かさで大人の乗り味を助けていたのとは対照的だ。一方でX-BREAKのブレーキはとてもリニアで扱いやすく、Advanceのそれとは別物だったことも付け加えておきたい。
先進のアイサイトはさすが! だが、しかし…
スバルご自慢のアイサイトはこの手の装置の先駆けだけに、特にACC(アダプティブ・クルーズコントロール)の緻密な制御には定評がある。フォレスターのものも先行車に対する追従の良さはさすがだ。ただし先日乗ったXVと比べると、特にe-BOXER搭載のAdvanceはやや低速域でのギクシャク感が気になった。
これもアメリカ、それもアメリカ
新しいフォレスターは見た目通り、やはり北米市場向けのクルマという印象が強かった。特に2.5Lにはそれを強く感じた。よく言えば大陸的な大らかさを持つクルマであり、悪く言えば大味なクルマだ。
一方のe-BOXERの近未来的、というか品の良いインテリな走りは、対照的なようで、実はこれもアメリカで好まれる乗り味なのかもしれない。レクサスやアウディがそうであるように。
(文:馬弓良輔、写真:萩原文博)
スバル フォレスターのオススメグレードはこれ!
車名 | 搭載エンジン | 駆動方式 | グレード名 | 価格(円) |
フォレスター | 2.5Lガソリン | 4WD | ツーリング | 2,808,000 |
プレミアム | 3,024,000 | |||
X-ブレーク | 2,916,000 | |||
2Lガソリン+モーター | アドバンス | 3,099,600 |
4グレード中唯一エコカー減税の対象車となるアドバンスがおすすめ
現在、日本国内で販売されているスバル車の中で、最低地上高220mmを確保し最も高い悪路走破性を実現しているのがフォレスターだ。先代モデルよりボディはひと回り大きくなり、ウィークポイントだったリアシートの居住性が大幅に改善されている。
現行型フォレスターに搭載されているパワートレーンはツーリング、プレミアム、X-ブレークの3グレードには2.5L水平対向4気筒自然吸気エンジン。そしてアドバンスには2Lガソリンエンジン+モーターを組み合わせたe-BOXERと呼ばれるマイルドハイブリッドシステムを搭載している。
価格はe-BOXERを搭載したアドアンスが最も高いが、エコカー減税の対象となるため、プレミアムやX-ブレークとの価格差は縮まる。さらに2.5Lエンジンは自動車税が4万5000円で、2Lの3万9500円と比べると、+5500円高くなる。また燃費性能も14.6km/Lと18.6km/Lと差があるため、おすすめグレードはアドバンスだ。
スバルフォレスターのライバルはこれ!
車名 | 価格(円) | ボディサイズ(全長×全幅×全高mm) |
スバル フォレスター 2.0 e-BOXER アドバンス 4WD | 3,099,600 | 4625×1815×1715 |
ホンダ CR-V ハイブリッドEX・マスターピース4WD | 4,361,040 | 4605×1855×1690 |
マツダ CX-5 XD Lパッケージ 4WD | 3,558,600 | 4545×1840×1690 |
ホンダCR-V - 7人乗りも設定しているが価格は高め
約2年振りにミドルクラスSUVのホンダCR-Vが日本市場で復活した。現行型CR-Vはよりグローバル色を強めて、ボディサイズを拡大。その大きくなったボディを活かして、7人乗りの3列シート仕様をガソリン車に用意しているのが特徴だ。
CR-Vに搭載されているパワートレーンは最高出力190psを発生する1.5L直4ターボエンジンと2Lエンジン+モーターを組み合わせたハイブリッドシステムの2種類。フォレスターがモーターアシストのマイルドハイブリッドに対して、CR-VはJC08モード燃費で25〜25.8km/Lという優れた燃費性能を発揮するストロングハイブリッドだ。
フォレスターと比べるとCR-Vは搭載しているパワートレーンの燃費性能など先進性ではリードしているが車両本体価格は高い。また悪路走破性に寄与する4WDに関してはシンメトリカルAWDやX-モードを採用するフォレスターのパフォーマンスが圧倒的だ。
ホンダCR-Vのスペック
ボディサイズは全長4605 mm×全幅1855mm×全高1680mm(4WD車は1690mm)。搭載するパワートレーンは1.5Lターボエンジンと2Lエンジン+モーターのハイブリッドシステムの2種類。駆動方式はガソリン車、ハイブリッド車ともにFFと4WDを設定し、ガソリン車には7人乗りも用意する。新車価格は2.0 EX 2WDの323万280円〜ハイブリッドEX・マスターピースの436万1040円と3台の中で最も高額となっている。
マツダCX-5 - 2.5Lターボを追加し、バリエーションを拡充
今回紹介する3車種の中で、2017年2月登場と最も古いモデルとなってしまったのがマツダCX-5。ライバル車の登場に合わせて、2018年10月にマイナーチェンジを行い、従来3種類あったエンジンに、最高出力230ps、最大トルク420Nmを発生する2.5L直4ターボエンジンを追加し、ラインアップ強化を図っている。
フォレスターやCR-Vがハイブリッド車を設定しているのに対して、CX-5の特徴はディーゼルターボを用意していること。車両重量が約1700kgのミドルクラスSUVをスムーズに加速させつつ、高速走行時は約20km/Lという優れた燃費性能はライバルたちを圧倒的にリード。車両本体価格は高いが、ランニングコストは安く抑えられる。しかも直近のマイナーチェンジでディーゼル車に6速MT車が追加されている。
ただ進化したとはいえ4WDシステムがスタンバイタイプなので、悪路走破性はフォレスターがいまだにリードしている。
マツダCX-5のスペック
ボディサイズ全長4545mm×全幅1840mm×全高1690mm。搭載するエンジンは2L直4ガソリンをはじめ、2.5L直4NA、2.5Lターボ、そして2.2L直4ディーゼルターボと多彩。駆動方式は2Lガソリン車を除き、FFと4WDを設定。マイナーチェンジでディーゼルターボ車に6速MTを追加した。新車価格は20S 2WDの257万400円からXD エクスクルーシブモード4WDの388万2600円。