人気車種 試乗&ライバルチェックVol.10
トヨタ プリウス
VS ノート&リーフ

(2019.4)


<目次>
▽ クルマも見た目が8割なのか?
 ▼ 明らかに売れていなかった
 ▼ 当たり外れのハズレ
 ▼ だいぶコンサバになった顔つき
 ▼ 「隠れ課題」だった内装の改善は今ひとつ
 ▼ ルーズなハイブリッドは過去のもの
 ▼ 80km/hまでなら、ほぼ文句のない乗り心地
 ▼ いいクルマだけど
 ▼ オススメグレードはこれ!
▽ ライバルはこれ!
 ▼ 日産 ノート
 ▼ 日産 リーフ


クルマも見た目が8割なのか?

試乗グレード:

A“ツーリングセレクション” 1.8Lエンジン+モーター・電気式無段変速機・4WD 320万1120円(試乗車370万6020円)(税込)

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 2018年12月、4代目となるトヨタプリウスが初のマイナーチェンジを受けた。その個性的すぎる外観が裏目に出て、ベストセラーの座から転落した現行型プリウスだが、今回のマイナーチェンジで失地回復は図れるのだろうか。見た目だけでなく、その走りの実力は変わったのだろうか。そのあたりを探るためにさっそく街へと連れ出してみた。

明らかに売れていなかった

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 2015年12月に登場した4代目のトヨタプリウス。素晴らしい燃費性能に磨きを掛けつつ、新しい思想のシャシー採用で弱点と言われてきた走行性能の改善も図るなど、力の入ったモデルチェンジを行なったはずだった。

 しかし登場当初の2016年の年間販売台数こそ24万台を超えたものの、2年目の2017年は16万台に急減速。そして2018年には11万台少々まで落ち込み、登録車販売台数トップの座を日産ノートに明け渡しただけでなく、同門のアクアにすら抜かれ3位まで転落してしまった。「e-Power」が加わったとはいえノートは2012年、アクアに至っては2011年登場のモデルだ。いかにプリウスが不振かわかるだろう。

当たり外れのハズレ

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 その原因が誰しも指摘するようにスタイルにあったのは間違いない。全体のフォルムは相変わらずプリウスの伝統を受け継ぐ空力重視のものだったが、なにしろヘッドライトを中心とした「顔つき」が奇抜過ぎた。4代目プリウスにとってトヨタのデザインが削る方向から盛り付ける方向に舵を切リ始めたタイミングだったことは不運だった。盛り付けるデザインは当たり外れが大きい。その前後に出たシエンタやC-HRはうまくいったが、プリウスでは大きく外してしまったということだろう。このあたりは先進性を常に要求されつつも、販売台数の大きな期待も背負わなくてはならないプリウスならではの難しさもある。

だいぶコンサバになった顔つき

 トヨタとしても不振の理由は十分わかっていたようで、今回のマイナーチェンジでヘッドライト周りを中心とした外観に大幅な手直しを加えてきた。全体的な印象は2017年12月に追加されたPHVモデルに近づいている。それでもまだ個人的にはスマートさに欠けるのではないかと思うが、少なくとも嫌われるデザインからの脱出にはかろうじて成功したと言ってもいいだろう。

 ちなみにプリウスのカタログの外観デザインのページには「あなたも同意見だと、うれしいのですが」とか「あなたの目に、このクルマはどう映りますか」など、カタログにしてはずいぶん弱気な(?)コピーが載っている。プリウスのデザインの悩みは深そうだ。

「隠れ課題」だった内装の改善は今ひとつ

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 外観デザインの不評の陰に隠れていたが、4代目プリウスの内装もあまり褒められたものではなかった。今回のマイナーチェンジでセンターコンソールが黒くなるなど、品質感はある程度改善されている。また、スマホの充電スペースが大きくなるなど細かな改良も加えられている。しかしダッシュボード下部が象徴的だが、機能に関係のない無駄なデザインが多く、それが煩く感じるのは相変わらずだ。

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 新しさを感じさせなければならないプリウスゆえのデザイン的な苦悩は理解できるが、見回してみればもっと先進的なインパネを持つクルマがずいぶん増えてきた。運転が好きな人にとってセンターメーターはやはり「やる気」が出ない。このあたりは次回作に期待だ。

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 デザインはともかくとして、さすがにプリウスくらいのサイズになるとフロントシートに座ったときに余裕を感じる。シートの掛け心地も悪くない。

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 いっぽうリアシートは空力を重視したデザインの影響で頭上空間に余裕がなく、また着座位置が低めなので、それほど居心地の良い空間ではない。運転席の上部に全高のピークを持ってくる「プリウスらしいフォルム」を採用する限り、リアシートの着座位置の問題は解決が難しい。

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 試乗車は4WDモデルだったのでラゲッジルームの床が2WDに比べて少々高かった。ただし前後方向の余裕は十分あるので、大人4人の週末旅行程度であれば問題はないだろう。

ルーズなハイブリッドは過去のもの

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 走りはずいぶん良くなった。いや、相当良くなったと言ってもいいだろう。80km/hくらいまでならアクセルをかなり踏み込んでもリニアな反応をみせる。エンジン回転数、というより体感的にはエンジン音が車速にほぼ比例しているので、以前のハイブリッドの悪癖だった「ラバーフィール」を感じる場面は少ない。そしてその制御も非常に洗練されているので、スムーズにクルマを走らせることができる。

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 「ラバーフィール」の少なさでいえば、モーター駆動が主役の最新ハイブリッドを搭載したホンダの新型インサイトともほぼ遜色ない。ただエンジンに依存している印象がやはりプリウスの方はあって、インサイトで感じたモーターの力強いトルク感はやや薄い。ただその差は非常に小さく、高速域ではむしろプリウスの方がエンジンと車速の上がり方が自然だった。

80km/hまでなら、ほぼ文句のない乗り心地

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 乗り心地も驚くほど改善されている。特に60km/h前後での乗り心地は上下動の収め方がうまくてフラット感ある。なにより熟成が進んだのかリアサスペンションがしなやかになったのが印象に残った。80km/hより上の速度域だと、やや上下動の収まりが悪くなってくるが、例えばクラウンあたりから乗り換えたとしても不満は出ないだろう。

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 ステアリングは鼻の入りが妙に良く、市街地であれば軽快な印象を与えてくれる。ただし速度域によってはちょっと切れすぎる印象を受けた。トヨタ車にありがちなコーナリング中の「線の細さ」はずいぶん薄れたが、速度域の高い不整な路面だと、やはり不安定な挙動が出てくることもあって、総合評価としては微妙だ。

 試乗したクルマはツーリングセレクションだったので幅広タイヤを履いていたが、見た目の良さ以外には百害あって一利なしではないだろうか。非常に静かなクルマなのにロードノイズだけがやけに入ってくるし、ちょっとクセのあるステアリング特性も無関係ではないはずだ。

いいクルマだけど

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 マイナーチェンジを受けたプリウスで印象に残ったのは走り味のクオリティがとても良くなったことだった。また、都内近郊ではどんな乗り方しても21~22km/Lの範囲で安定していた燃費もさすがとしか言いようがない。100km/hくらいになると平均燃費を下回りはじめるのは相変わらずだが、依然エコカーのなかでも最良の実燃費を誇る一台だ。

 今回試す機会はなかったがコネクテッドサービスや先進安全運転支援装置など、マイナーチェンジを機に最先端の技術もふんだんに導入され、販売のネックだったデザイン面を修正し、商品力は大幅にアップしたプリウス。しかし最新の2019年3月販売台数ランキングは「定位置」の3位と、マイナーチェンジ直後にしてはパッとしないし、前年比もわずかだが下回っている。

 もちろんC-HRやカローラスポーツの登場をはじめとしたハイブリッド車の多様化も影響しているだろう。後席の居住性などハイブリッド専用車ゆえのネックに気づいたプリウスオーナーの造反もあるのかもしれない。

 しかしプリウスの乗ることの価値の一つだった燃費の優位性が相対的に薄れているなかで、かつてのプリウスのもう一つの魅力だった乗りたくなるデザイン、所有欲を満たしてくれるデザインには、今回のマイナーチェンジ程度では足りていないことが、もしかしたら一番の原因なのではないだろうか。

(文:馬弓良輔、写真:萩原文博)

トヨタ プリウスのオススメグレードはこれ!

車名 搭載ハイブリッドシステム グレード名 駆動方式 価格(円)
プリウス 1.8Lエンジン+モーター THSII E 2WD 2,518,560
S 2WD 2,565,000
4WD 2,759,400
Sツーリングセレクション 2WD 2,732,400
4WD 2,926,800
A 2WD 2,842,560
4WD 3,036,960
Aツーリングセレクション 2WD 3,006,720
4WD 3,201,120
Aプレミアム 2WD 3,175,200
4WD 3,369,600
Aプレミアム
ツーリングセレクション
2WD 3,284,280
4WD 3,478,680

乗り心地が大幅に向上したAツーリングセレクション

 優れた燃費性能によってベストセラーカーに君臨していたハイブリッド車のトヨタプリウス。2015年12月に登場した現行型はトヨタのクルマ構造改革であるTNGAを採用した第1弾として晴れ晴れしく登場したが、ハイブリッドシステムがキャリーオーバーだったこと。そして何より個性的なスタイリングが個人ユーザーに敬遠された。その結果、2018年の新車販売台数で日産ノート、そしてアクアに後塵を拝してしまった。この逆境を打破するために2018年12月にプリウスはマイナーチェンジを行った。

 外観はプリウスPHVに近づき、シャープな印象が際立つデザインを採用。また、専用通信機DCMを搭載し、コネクテッド機能を強化した。そして、最も変わったのが乗り心地。前期モデルはTNGAのシャシーをうまく活かせず、特にツーリングセレクションはガチガチの乗り味だった。しかし、後期型は一変!同じツーリングセレクションでもしなやかでフラットな乗り味に進化した。これなら。見た目もカッコ良く装備も充実したAツーリングセレクションが狙い目だ。

トヨタプリウスのライバルはこれ!

車名 価格(円) ボディサイズ(全長×全幅×全高mm)
トヨタ プリウス Aツーリングセレクション 3,006,720 4575×1760×1470
日産 ノート e-POWER メダリスト 2,353,320 4100×1695×1520
日産 リーフ G (40kWh) 3,999,240 4480×1790×1540

日産 ノート - 静粛性が高いメダリストの満足度は高い

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 2018年登録車の新車販売台数No.1に輝いたのが日産ノート。この好調の要因は2016年11月に追加した新パワートレイン、e-POWERの影響によるものだ。e-POWERはリーフで培った電動技術とガソリンエンジンを組み合わせたもの。搭載する1.2Lガソリンエンジンは発電のみに使用し、搭載するモーターによって走行するシリーズハイブリッドだ。電欠の心配がないうえモーターの低回転からの胸をすくような鋭い加速を味わえることで、人気となった。

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 現在、ノートはこのe-POWERが主力となっており、カタログモデルに加えて、走りを磨いたニスモ、上質さを追求したオーテックにもe-POWER搭載車をラインナップしている。ノートe-POWERで狙い目のグレードはメダリスト。標準モデルに比べて、静粛性を高める遮音材を多く採用しているため、車内に侵入するノイズを抑えてくれるからだ。一方でプリウスに比べると車両価格は安いが、静粛性や室内空間の広さなど質感では一歩譲る。

日産ノートのスペック

ボディサイズは全長4100 mm×全幅1695mm×全高1520mm(4WD車は1525mm)。搭載するパワートレインは1.2L直3ガソリンエンジン、1.2L直3スーパーチャージャー付エンジン、ニスモ専用の1.6L直4エンジンそして1.2Lガソリンエンジン+モーターのシリーズハイブリッド、e-POWERの3種類。トランスミッションはCVTを中心に、ニスモSに搭載される1.6Lエンジンには5MTも用意。駆動方式はFFに加えて、電気式の4WDを設定。新車価格は142万1280円〜267万1920円。

日産リーフ - 走行距離400km超のe+(イープラス)を追加

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 今回紹介する3車種の中で、唯一ガソリンエンジンを搭載しないのが、ピュアEV(電気自動車)の日産リーフ。2代目となる現行型は2017年9月に登場。40kWhのバッテリーを搭載し、一満充電時の航続走行距離はより実走行に近いWLTCモードで322kmを達成し、「電気自動車は航続走行距離が短い」というネガなイメージを払拭した。

 【人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ プリウス】4WD 1800 A ツーリングセレクション

 そして、2019年1月に62kWhという大容量バッテリーを搭載し、WLTCモードで458kmという航続走行距離を実現するのと同時に、加速性能を15%、最高速度を10%向上させたe+(イープラス)を追加した。ただし、航続走行距離が延びているものの、バッテリーの充電時間が長くなるといデメリットもあるので、オススメは40kWhのG。価格面ではプリウスより高いリーフだが、減税額も大きいので、見た目以上に価格差は縮まる。ガソリンを使用しない点では、コスト的に魅力だが、一戸建てでないと自宅に充電器を設置が難しいなどインフラの懸念が気になるところだ。

日産リーフのスペック

ボディサイズ全長4480mm×全幅1790mm×全高1545mm。搭載するモーターシステムは40kWhと62kWh。62kWhのe+は40kWhの同じグレードに比べて160kg車両重量が重くなるため、専用のサスペンションチューニングなどが施される。標準モデルに加えて、走行性能に磨きを掛けたスポーティモデルのニスモもラインアップする。新車価格は324万3240円〜472万9320円。