人気車種 試乗&ライバルチェック 特別号
第46回 東京モーターショー 2019で登場した注目のクルマたち
(2019.11)
▽ 新しい東京モーターショー、新しく登場したクルマたち
▽ クルマだけではない
▼ 【トヨタ】新型ヤリスやミライが登場するも、主役は・・・
▼ 【ホンダ】新型フィットがデビュー!5つのスタイルをもつ意欲作
▼ 【スバル】新型レヴォーグのコンセプトモデル、そしてEJ20ファイナルも
▼ 【日産】軽自動車とSUV、2台の電気自動車コンセプカーを発表
▼ 【三菱】来年早々発売の新型eKスペースにクロスモデルを設定か
▼ 【ダイハツ】新型ロッキーをサプライズ発表!
▼ 【スズキ】12月発売予定の新型ハスラーを参考出品!
▼ 【マツダ】驚きの電気自動車には観音開きドアとロータリーエンジンのレンジエクステンダーが
▼ 【レクサス】エレガントなLCコンバーチブルを公開!
▽ 未来にもFUN TO DRIVE
新しい東京モーターショー、新しく登場したクルマたち
第46回となる東京モーターショーが2019年10月25日から11月4日まで、12日間にわたって開催された。クルマ離れや輸入車ブランドの相次ぐ出展の見合わせなど逆風のなか、今回の東京モーターショーは様々な新しい取り組みが導入され、来場者数は前回の77万人から130万人へと大幅に増加した。今回はそんな東京モーターショーの様子を注目の新型車を中心にリポートしよう。
クルマだけではない
東京だけでなくドイツのフランクフルトモーターショーやフランスのパリサロンでも出展メーカーが減少するなど、世界各国のモーターショーは曲がり角を迎えている。そのような状況のなかで開催された今回の東京モーターショーは、国内メーカーによる積極的な新型車の発表はもちろん、広大な展示エリアにクルマを取り巻く社会と未来をフューチャーした演出を加えるなど、非常に意欲的なショーとなった。
会場は「有明エリア」の東京ビッグサイト西・南展示場周辺と、「青海エリア」の東京ビッグサイト青海展示場・メガウェブ・ヴィーナスフォートに分かれた。
東京五輪関連工事の影響で東京ビッグサイト東展示場が使えなかったための苦肉の策ではあるが、2つのエリアを結ぶプロムナードではキャンピンカーやスーパーカーの展示、マイクロモビリティの体験などの関連イベントも開催され、お台場一帯がモーターショー一色に染まった。
【トヨタ】新型ヤリスやミライが登場するも、主役は・・・
東京モーターショーを主催する日本自動車工業会(自工会)の現在の会長は、トヨタ社長でもある豊田章男氏だが、一般公開に先駆けて行われたプレスカンファレンスで豊田社長が行ったスピーチは、今回のショーを象徴するように、ほぼすべてが未来のクルマと社会について費やされた。途中からは光と音楽の洪水にダンスを交えたパフォーマンスショーとなり、いつヤリスやミライが紹介されるのかと待っていた報道陣を呆然とさせた。
登場が近いと予想されていたヤリス、ミライ、グランエースなどの新型車はヴィーナスフォートやメガウェブなどに展示され、トヨタブースには置かれなかった。代わりに近未来のモビリティをイメージしたコンセプトカーや様々な体験型のイベントが用意され、トヨタが考える「これからのクルマ社会」を来場者にアピールした。
そんなトヨタにあって注目はなんといってもヴィッツ後継となる新型ヤリスだろう。ライバルのホンダフィットが大々的にアピールするなか、不遇のデビューを飾ったヤリス。しかし先進的にもかかわらず、うまくまとめ上げられたスタイリングは、保守的だったヴィッツより多くの支持を受けるのではないだろうか。発売は来年2月とされている。
トヨタブースの隣のトヨタ車体ブースに飾られていた年内発売とされるグランエースも注目の一台。海外で販売されている新型ハイエースをベースとした高級ミニバンで、ボディサイズは全長が5.3m、幅も約2mと巨大だ。アルファード/ヴェルファイアに飽き足らない人へアピールしそうだ。
燃料電池車「ミライ」の新型も登場した。コンセプトカー然とした現行型と比べて、ずいぶんコンサバになったスタイルに、電気自動車だけではない未来の動力源「水素」にかけるトヨタの本気を感じる。これも来年には発売されるようだ。
ハイブリッドで先行したトヨタは、これまで電気自動車の発売については様子見だったが、今回初めての市販モデルとなる二人乗りコンパクトEVを発表した。短い航続距離を想定した街乗り用としているあたりに、バッテリー性能の制約がある電気自動車をトヨタがどう位置付けているかがよくわかる。遠くに行くならハイブリッドでどうぞ、ということだろう。
【ホンダ】新型フィットがデビュー!5つのスタイルをもつ意欲作
ホンダは新型フィットをショーデビューさせ、トヨタヤリスとは対照的に大々的にアピールした。登場当初のリコール問題の影響でセールス的には今ひとつだった先代フィットの失地挽回を図るためだろう、新型フィットはなかなかの力作に仕上がっている。
ライフスタイルに合わせた5つのバリエーションが用意され、ハイブリッドもオデッセイなどに搭載されている2モータータイプとなった。発売は当初年内とされていたが、2月に延期なったのも先代の二の舞を避けるためだろう。
すでに海外で発表されている電気自動車「ホンダe」も市販モデルが展示されていた。航続距離は200km程度とされ、こちらも街乗りを意識したコンセプト。ネオクラシックなデザインと裏腹にリアモーターを採用したその走りには、相当な自信を持っていると聞いた。
【スバル】新型レヴォーグのコンセプトモデル、そしてEJ20ファイナルも
スバルは新型レヴォーグのコンセプトカーを、これぞモーターショー!という派手な演出とともに発表した。スモークに包まれ、クルマがせり上がってくる演出、どこかで見たことがあるなと前回のモーターショーの記憶を辿ったら、それもやはりスバルだった。トヨタのような「先進的」なカンファレンスも良いが、一方で古典的なスバルにもワクワクする。両方が混在するのが今回のモーターショーらしい。
新型レヴォーグの発売は2020年末といわれているが、そのスタイリングは市販モデルに相当近いのではないだろうか。新開発のプラットフォームと1.8L水平対向ターボエンジンを採用したとする走りにも期待が大きい。アイサイトもスカイライン同様にナビ連動によるハンズオフ運転が可能になるようだ。
会場には名機EJ20を搭載したファイナルのモデルとなるWRX STIも展示され、走りのスバルらしさをアピールしていた。
【日産】軽自動車とSUV、2台の電気自動車コンセプカーを発表
日産はSUVと軽自動車、2台の電気自動車のコンセプトカーを発表した。軽自動車IMkコンセプトは来年にも発売が予想されているデイズルークスベースと思われるが、共同生産先の三菱がeKスペースクロスと思われる市販予定モデルを展示したことに比べると少々肩透かし感はぬぐえない。
とはいえ売れ筋のスーパーハイトワゴンのEVは市販されれば大きな反響を呼び起こす可能性を感じる。電気自動車だからといって、未来的なスタイリング、つまり実用性では劣るスタイリングを持たなくてはならない理由は、そろそろ薄れてきているからだ。
47もう一台のSUVタイプ「アリアコンセプト」のほうは前後2モーターによる4WDのEVだ。サイズ的には次期エクストレイルを予感させる。
【三菱】来年早々発売の新型eKスペースにクロスモデルを設定か
三菱は前述のように来春までに発売が予定されているスーパーハイトワゴンのコンセプトカー、つまり新型eKスペースと思われるクルマを発表した。
N-BOXやタント、スペーシアといった強豪揃いのマーケットに対して、先に発売されたeKクロス同様、三菱はクロスモデルも投入するようだ。
もう一台、三菱らしいメカメカしいスタイリングを身にまとったSUVコンセプトカーが発表された。ガスタービンによるプラグインハイブリッドを搭載するなど、コンセプトカーながら未来と現実の間にちょうどよく収まる一台だ。
【ダイハツ】新型ロッキーをサプライズ発表!
サプライズ発表を行ったのはダイハツ。ショー後にすぐ発売された新型ロッキーを会場に持ち込んで注目を集めた。兄弟車としてトヨタからはライズとして発売されたこともあって、RAV4とのデザイン近似性を感じるが、居合わせた関係者はデザインの面でRAV4の影響はまったく受けていないと断言していた。
内装は黒基調にシルバーの加飾がなかなかスポーティだ。全長4mに1Lターボエンジンという組み合わせは使い勝手の良いコンパクトSUVとして人気を集めそうだ。
【スズキ】12月発売予定の新型ハスラーを参考出品!
スズキも12月発売予定の新型ハスラーを発表した。好評のスタイルはキープコンセプトだが、ベースがハイトワゴンのワゴンRからスーパーハイトワゴンのスペーシアへと変更されたことで、さらに使い勝手に期待が持てる。
スズキはこのほかにもクーペとワゴンの2つのスタイルを持つ、往年のパルサーエクサのようなWAKUスポという名のPHEVのコンセプトカーも出品した。
【マツダ】驚きの電気自動車には観音開きドアとロータリーエンジンのレンジエクステンダーが
マツダが発表した電気自動車SUVの「MX-30」もプレスカンファレンスで驚きをもって迎えられた。
RX-8を彷彿とさせる観音開きドアを持ち、さらにロータリーエンジンのレンジエクステンダーも搭載するなど、「内燃機関のマツダ」が送り出す電気自動車らしい独創的な一台だ。来年末には欧州での発売が検討されている。
【レクサス】エレガントなLCコンバーチブルを公開!
レクサスは外国人プレスが多かったこともあって、まるでジュネーブモーターショーあたりのブースかと思わせる。主役は来年発売予定のLCコンバーチブル。オープンとしたことでエレガントさを増した印象だ。
もう一台、ガルウイングがコンセプトカーらしいLF-30エレクトリファイドは、2030年のレクサスのフラッグシップ。4輪インホイールモーターを採用し未来感をアピールしていた。
未来にもFUN TO DRIVE
12年ぶりに100万人以上の来場者を集めた今年の東京モーターショー。100年に一度の変革期といわれる自動車業界の危機感、そしてそれに立ち向かう前向きな姿勢を感じることができた。報道陣を呆然とさせたトヨタのプレスカンファレンスの最後の方で「近未来の自動車にもFUN TO DRIVEを持たせる」と語った豊田会長の言葉も、それを裏付けていた。
(文:馬弓良輔、写真:萩原文博)