人気車種 試乗&ライバルチェックVol.11
マツダ CX-8
VS レクサス RX・エクストレイル
(2019.8)
▽ 素晴らしいグランドツアラー
▼ CX-5のストレッチ版ではない
▼ 撤退したミニバンマーケットへのマツダの回答
▼ 輸入車SUVに負けない上質さ
▼ 謎のターボエンジン、ハイパワーバージョンではないのか?
▼ まるで高級車のV8のような、印象に残る回り方
▼ フィーリングの良さを取るか、燃費を取るか
▼ マツダ車らしくない大らかな乗り心地
▼ CX-5にこのエンジンは似合わない
▼ 輸入車SUVより割安、最大のライバルはやはりディーゼルか
▼ オススメグレードはこれ!
▽ ライバルはこれ!
▼ レクサス RX
▼ 日産 エクストレイル
素晴らしいグランドツアラー
試乗グレード
CX-8:25T L Package 2.5Lガソリンターボ・6AT・4WD(スノーフレイクホワイトパールマイカ)
427万6800円(試乗車430万9200円)(消費税8%込)
CX-5:25T L Package 2.5Lガソリンターボ・6AT・2WD(ソウルレッドクリスタルメタリック)
340万2000円(試乗車347万7600円)(消費税8%込)
3列シートをもつ大型SUVとしては異例のスマッシュヒットとなったマツダCX-8に2.5LガソリンNA(自然吸気)と2.5Lガソリンターボモデルが追加された。これまでCX-8に搭載されていたエンジンは2.2Lディーゼルターボのみだったが、新しいエンジン、特に2.5Lガソリンターボはディーゼルとの住み分けが気になるところ。同時に同じ2.5Lガソリンターボが搭載されたCX-5も連れて試乗テストに出かけてみた。
CX-5のストレッチ版ではない
新しい2.5Lガソリンターボの印象を書く前に、CX-8のおさらいをしてみよう。2017年12月に発売されたマツダCX-8は全長4900mm×全幅1840mm×全高1730mmと国産車にしては比較的大柄なボディを持つSUVだ。CX-5をストレッチしたと思われがちだが、実は北米で販売されているCX-9をベースにしている。
見慣れたCX-5のサイズは全長4545mm×全幅1840mm×全高1690mm。並べてみるとリアのオーバーハング以上にホイールベースの差が大きいことがわかる。CX-5の2700mmに対してCX-8は2930mmもある。CX-5に比べるとCX-8のデザインは伸びやかで、いかにもグランドツーリングが似合いそうだ。
個人的にこのクラスのSUVは車高の影響でCX-5にしてもアウディQ5にしても少々寸詰りに見える。実際ラゲッジルームは長さ方向がやや足りないと思うことが多いが、CX-8に関しては十分な長さがあるし、その結果としてスタイルのバランスが良い。全幅を1845mmに収めているのも日本マーケットでは有効だ。
撤退したミニバンマーケットへのマツダの回答
マツダはミニバンではマツダらしい走りやデザインが実現できないとして、マーケットからの撤退を宣言、すでにMPV、ビアンテ、プレマシーの販売を終了している。それらのミニバンと入れ替わりに登場したCX-8は、多人数乗車を望む人たちへのマツダなりの回答のようにも思える。
CX-8は全長が長いだけに2列目も3列目も前後方向の余裕はさすがだ。2列目に関して要望はない。運転席もそうだが疲れないシートで基礎点がとても高い。高めの着座位置に加えてリクライニング機能もあり、オットマンこそないが上級ミニバン並みに寛げる空間になっている。
2列目に関しては仕様が3種類ある。どれも2名乗車なら同じ居心地なのは良い。ただし写真の豪華なLパッケージでない「普通」の2人乗りを選ぶとウオークスルーになる代わりにドリンクホルダーがドアポケットのみになる点は要注意だ。また2列目を倒した時に3人乗りは隙間なくフラットになる。ステーションワゴンのように使いたい人にはこちらのほうが向いている。このあたりは使い方を想像してチョイスした方が良いだろう。
注目の3列目はセンターアームレストがないこと、ほんの少し足が浮いてしまうこと以外は、セレナやステップワゴンクラスの3列目と比べて見劣りする点はない。これなら少々の遠出でも背の小さい人なら文句は出ないはずだ。
ミニバンでも床下収納できるモデルは少ないが、CX-8は実用的な3列目がレバーひとつで倒れる点も良い。ただしカーゴルームの高さはミニバンに比べるとさすがに十分とはいえない。
ここにきてレクサスRXや三菱アウトランダー、日産エクストレイルなど、3列シート仕様をラインアップするSUVも増えてきたが、CX-8の3列目シートの広さや使い勝手の良さは、ライバルたちをはるかに凌いでいる。完全にミニバン並みとは言わないが、6人が乗っても十分実用的だ。
輸入車SUVに負けない上質さ
CX-8のインテリアは広いだけでなく仕立てが良いことも人気の理由だ。黒を基調としたインテリアの質感はとても良い。クロームの差し色が効いているし、樹脂の品質も欧州プレミアムのSUVと比べても見劣りしない。ただ天井まで黒いのはどうだろう。CX-5と異なりサンルーフの設定がないのも気になった。
ちなみにCX-5が登場した時に唯一ケチくさいと思ったパワーウインドウのワンタッチスイッチは、最初の一部改良の際に全席ワンタッチになっておりCX-8にもそれが受け継がれている。
謎のターボエンジン、ハイパワーバージョンではないのか?
今回、CX-8とCX-5に追加された2.5Lガソリンターボエンジンは新開発のものとなる。2.5LガソリンNAが190PS・252Nm、2.2Lディーゼルターボが190PS・450Nmなのに対して、この2.5Lガソリンターボは230PS・420Nmを発揮する。馬力とトルクの関係でいえば順当なスペックだが、このエンジンが特徴的なのは最大出力を出すのが4250回転と異例に低いことだ。ちなみに2.5LガソリンNAは6000回転、2.2Lディーゼルターボですら4500回転である。最大トルクの発生回転数もディーゼルターボと同じ2000回転とこれまた低い。そしてギア比も最終減速比含めて2.2Lディーゼルターボと2.5Lガソリンターボはまったく同一だ。
定石通りのエンジンラインナップであればベーシックな2.5LガソリンNA、ゆったり余裕ある走りを楽しむ2.2Lディーゼルターボ、そしてハイパワーバージョンのスポーティな2.5Lガソリンターボ、となるのだが、スペックを見る限りどうも様子が違う。「謎の新エンジン」というのが試乗前の率直な感想だった。
まるで高級車のV8のような、印象に残る回り方
実際に走り出してみると、トルクは十二分にあるがディーゼルには及ばない。いっぽう伸びの良いパワー感はディーゼルを凌いでいる。パワーを感じるのはせいぜい5000回転までだが、2000回転から4000回転くらいの間はターボエンジンらしい2次曲線的な加速をレスポンス良く味わえる。いわゆるターボラグはまったく感じない。
文字にするとまさにスペック通り、ということなのだが、このエンジンが印象的なのはその回り方だ。マツダは「4.0L V8自然吸気ガソリンエンジン並みの力強いトルクと、意のままにクルマを操れるリニアな加速レスポンスを発揮する」と、このエンジンの特性についてアナウンスしている。
確かに感触は大排気量V8エンジンではあるのだが、高性能なスポーツバージョンのV8ではなく高級車に積まれるタイプのそれに近い。一番似ていると思うのはベントレーのミュルザンヌに搭載されている6.75LのV8エンジン。改良を重ねたとはいえ遡れば1959年に製造が始まったロールスロイス由来の伝統的なエンジンだ。もちろんあれほど濃密なフィーリングはないけれど、世の中のエンジンをフィーリング別に10種類くらいに分けたとしたら間違いなく同じジャンルに入る、その程度には似ている。
フィーリングの良さを取るか、燃費を取るか
2.5Lガソリンターボエンジンに比べると、ディーゼルはやはり音も出るし、振動も出る。ディーゼルとしては非常に優秀だが、音や振動に関してガソリンエンジンを超えることはやはりできないのも事実だ。絶対的なトルク感はディーゼルが上回っており、いつでも必要なトルクを供給してくれる実直な裏方ではあるが、官能的な面はまったくない。
気になる燃費は高速も一般道も交えた150kmで8km/Lとやはりそれなり。レギュラー指定であることは幸いだが、街中では7km/L前後ではないだろうか。ディーゼルは街中でも12~13km/Lは走るし、高速では15km/L以上を叩き出す。走りの質感の良さはあるとはいえ燃費に関しては実質ディーゼルの2倍という点をどう捉えるかが問題だろう。
マツダ車らしくない大らかな乗り心地
CX-8のゆったりとした乗り味は、反応の速い足回りが多いマツダ車のなかにあって異質だ。高速でもフラットかつ大らかな乗り心地で、揺れの収束も良好。遠出に向いている。両輪同時に段差超えた時のハシューネスはタイヤの大きさを感じるが、乗り心地に関して気になるのはそのくらいだ。遮音性が高く、ロードノイズが少ないことも特筆に値する。
ゆったりしてはいるものの、強めのブレーキをかけてもノーズダイブをほとんど感じないのはさすがマツダだ。ステアリングは切っただけ曲がり、手応えも良い。あまり振り回す類のクルマではないが、十分な運動性能も持っている。
CX-5にこのエンジンは似合わない
今回は同じエンジンを積んだCX-5にも試乗したが、こちらは中途半端なモデルだと感じた。スポーティな味付けにしたいのはわかるが、アクセルを開けた時の出だしが明らかにCX-8よりも唐突で少々バランスを欠いてしまった印象だ。
CX-8のゆったりとしたリズムにはこの2.5Lガソリンターボは合うが、CX-5にはどうだろう。中途半端にアクセル特性を変えるくらいなら、もっと鋭い吹け上がりのエンジンを与えて、オートマもタイトにして、アウディSQ5みたいな引き締まった仕立てのプレミアムモデルにした方が良かったのではないかと感じた。今回の改良で変更になったというダンパーの固さがとても気になったことも付け加えておきたい。
輸入車SUVより割安、最大のライバルはやはりディーゼルか
CX-8はミニバンのみならず、輸入車のプレミアムSUVを検討している人にとっても気になる存在だ。なにしろ上質なインテリアと走りを持つSUVが400万円台で手に入るのだ。メルセデスやBMW、アウディはもちろん、例えばボルボXC60に比べて200万円近く安い。評価の高いXC60だがインテリアデザインを除けばむしろCX-8のほうが優っている点が多い。
CX-8を選択するにあたって悩みどころはエンジンのチョイスだろう。多くの人におすすめなのは2.2Lディーゼルターボだ。減税効果もあり購入価格は2.5Lガソリンターボと差がないうえに燃費は2倍良い。走りも余裕たっぷりだ。
ただ、長く付き合って「良いクルマだな」と感じる回数はおそらく2.5Lガソリンターボの方が多いだろう。クルマ好きを自認する方なら、間違いなくこちらがおすすめだ。
(文:馬弓良輔、写真:萩原文博)
マツダ CX-8のオススメグレードはこれ!
2,894,400 | ||||
3,256,200 | ||||
3,758,400 | ||||
3,742,200 | ||||
4,244,400 | ||||
3,607,200 | ||||
3,693,600 | ||||
3,925,800 | ||||
4,228,200 | ||||
4,460,400 |
2種類の2.5Lガソリンエンジンを 追加しバリエーション豊富となった
マツダはミニバンに変わる多人数乗車可能なクルマとして、2017年12月に3列シートSUVのマツダCX-8を発売した。CX-8以前にも3列シートをもつSUVは存在したが、その多くは居住性に難がありあくまでも緊急用という色合いが強かった。
しかし、CX-8はCX-5のロングボディではなく、北米仕様のCX-9をベースとすることで3列シートの居住性も余裕が生まれ、スマッシュヒットとなった。当初は2.2Lディーゼルターボのみだったが、2018年10月の商品改良で、2種類の2.5Lガソリンエンジンを設定。FF(2WD)車には最高出力190psを発生する自然吸気エンジン、そして4WD車には最高出力230psを発生するターボエンジンを搭載し、バリエーションの強化を図った。
新車価格は2.2Lディーゼルターボエンジン搭載車が高いものの、エコカー減税の適用により、グレードによってはガソリンターボ車を下回る。本文にもあるように5m級の大柄なボディのCX-8はディーゼルターボが最もマッチする人が多いだろう。グレードは安全装備や快適装備が充実したLパッケージがオススメだ。
マツダCX-8のライバルはこれ!
CX-8 25T Lパッケージ | ||
レクサスRX 450h L | ||
日産 エクストレイル 20X 4WD 3列車 |
レクサス RX - 価格は非常に高価だがその分満足度も高い
トヨタのプレミアムブランドであるレクサス。そのレクサスも新車販売の中心はSUVとなっており、フラッグシップのLXを筆頭にRX、NX、UXと異なるサイズの4モデルをラインアップしている。その中で中心モデルとなっているRXは3列シートモデルのRX450hLを2017年12月に追加している。
このモデルは従来からあるRXのボディを全長5mに延長したロングボディを採用。追加されたサードシートは電動格納式で、専用のエアコンを左右に配置するなどプレミアムブランドならではの充実した快適性を実現している。
搭載されているパワートレインは3.5LV型6気筒ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたTHS-IIと呼ばれるハイブリッドシステムで、駆動方式は4WDのみ。燃費性能は車両重量が2240kgというヘビー級ながら、JC08モード燃費で17.8km/Lを実現している。約800万円という新車価格から見るとライバルはCX-8ではなく輸入車だろう。
レクサス RXスペック
ボディサイズは全長5000mm×全幅1895mm×全高1725mm(RX450hL)。搭載するパワートレインは最高出力238psを発生する2L直列4気筒ターボと3.5LV6ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムの2種類で、3列シートモデルはハイブリッド車のみに設定。駆動方式はFFに加えて、電気式の4WDを用意し、新車価格は497万2000円〜769万円となっている。
日産 エクストレイル - 3列目シートはあくまでも緊急用
CX-8やレクサスRXと比べると、ボディサイズが小さい日産エクストレイル。全長約4.7mのボディの中に3列シートをレイアウトしたパッケージが特徴だ。残念ながら、2列仕様と同じ全長なので、3列目シートの居住性はCX-8に比べると厳しめ。あくまでも緊急用と考えておいた方がいいだろう。
エクストレイルは2Lガソリン車とハイブリッド車が設定されているが、ハイブリッド車はバッテリー搭載の都合があるため、3列シート車はガソリン車にしか設定されていない。現在はFF車だと20Xとカスタムモデルのオーテック。4WD車は先述の2グレードに加えて、アウトドアテイストを強めたエクストリーマーXの合計5グレードで3列シート車を選べるようになっている。
オススメは専用のダーククロムフロントグリルをはじめ、サイドとリアにスタイリングガードを装着。さらにグロスブラックでタフギア感を強めたエクストリーマーXだ。
日産エクストレイルスペック
ボディサイズは全長4690mm×全幅1820mm×全高1740mm。搭載するパワートレインは最高出力147psを発生する2L直列4気筒DOHCと、この2Lガソリンエンジンに最高出力41psを発生するモーターを組み合わせたハイブリッドの2種類。3列シートモデルは2Lガソリンエンジン車のみに設定されている。駆動方式はFFとインテリジェント4×4iと呼ばれる電子制御4WDの2種類で、新車価格は223万1280円〜380万4840円。