日本人のための「大きな高級車」

車名:トヨタ ヴェルファイア&アルファード

試乗グレード:

 ヴェルファイア ZG 7人乗り3.5L・8AT・FF(バーニングブラッククリスタルシャインガラスフレーク)494万7480円(試乗車652万2120円)(税込)

 アルファード Executive Lounge S 7人乗り2.5Lハイブリッド・AWD(ダークレッドマイカメタリック)750万8160円(試乗車766万5840円)(税込)


 


 国産ミニバンの頂点に君臨を続けるトヨタのヴェルファイアとアルファード。3代目となる現行型は2015年1月に登場、今回からついに「大きなミニバン」ではなく「大きな高級車」として開発したとトヨタは主張する。

 たしかにクラウンやレクサスにも引けを取らない豪華なインテリアと充実した装備類は高級車のそれだ。さらにセダンでは絶対に実現できない広大な室内空間は、特に2列目シートに座ると誰しもが実感するだろう。もちろんお値段も最上級グレードは700万円を超える。しかしその価格にもかかわらず2018年2月の販売台数はヴェルファイアが4835台で20位、アルファードが4534台で22位と驚くほどよく売れている。

 そんなヴェルファイアとアルファードが2017年12月末に初めてのマイナーチェンジを受けた。今回は700万円超えの最上級2.5Lハイブリッドモデルと、新しいエンジンとATを搭載した3.5Lモデルの2台を連れ出して、その実力をチェックしてみよう。


ますます力強く、ますます豪華になった外観



 


 


 もともとアルファードから派生したヴェルファイアだが、いまや販売台数ではアルファードを凌いでいる。その人気の理由は、もはや言うまでもないだろう、シャープなヘッドライトにメッキパーツを組み込んだ力強い顔つきだ。もとをただせばライバルの日産エルグランドにたどり着く気もするこの顔は、今や同門のヴォクシーはもちろん、メーカーや車種の垣根を超えて大増殖中だ。

 特に軽自動車のエアログレードの「なんとかカスタム」系は、揃いも揃ってヴェルファイアにインスパイアされているのは間違いない。つまり日本人の結構な割合の人が熱烈に支持しているということだろう。


 


 いっぽうのアルファードは力強さよりは豪華さを重視した顔つきを伝統としており、こちらはクラウンから脈々と続く日本車、いやトヨタの高級車らしさが表現されている。バックミラーに映ってギョッとするのは個人的にはアルファードの方だ。この巨大なフロングリルに本来の目的であるはずの空気取り入れ口がほとんど空いていないことも驚きだ。

 今回のマイナーチェンジで両車とも顔つきに、さらなる力強さと豪華さを加えてきた。この2台の新型が出るたびに「果たして次に出るモデルの顔はどうなってしまうのだろう」といらぬ心配をしてしまうのだが、今回も同じ感想を持ったことは正直に告白せざるを得ない。


運転席も主役、2列目も主役



 


 ヴェルファイアとアルファードは外観だけではなく室内空間も他のミニバンとは異なっている。なにより運転席の位置が高い。ドアの開口部が狭いこともあって、せっかくの低床フロアを持ちながら運転席にはステップに足をかけないとスムーズに乗り込めない。でも巨大なSUV、例えばレンジローバーあたりと並んだとしても見下されることのない、このポジションもこの2台の人気の理由であり、そのむかしホンダエリシオンが売れなかった理由でもある。


 


 大きくそびえ立つダッシュボードやシフトレバーまわりの広大なセンターコンソールによって、車体の大きさの割に囲まれ感が強い理由も同様である。このクルマは「大きな高級車」であるのと同時に「大きなドライバーズカー」でなければならないのだ。

 細かいところだがパワーウインドウの動きが最初と最後にゆっくり動く制御が組み込まれているのも高級感がある。むやみに動かしたくなるのはいい機械の証拠だ。ただしイマドキっぽい大きなナビはスマホのようにはサクサク動かないし、いかにも傷がつきそうな空調パネルのセンスは少々古い。せっかくならステアリングのチルト&テレスコも電動であってほしい。


 


 運転席も特別感はあるものの、このクルマの2列目シートに座ると、やはりここが特等席なのではないかと思ってしまう。シートの着座位置が比較的高めできちんと座らせるタイプなのは意外だ。


 


 


 いろいろ電動で動くシート、立派なアームレスト、手元には照明のスイッチもあり「まるでリビングのような豪華な室内」という紋切り型の表現が頭に浮かぶが、果たして自分の家のリビングにこんな豪華な椅子がある人がどれだけいるのだろう?


 


 特に今回のマイナーチェンジで追加されたExecutive Lounge Sの2列目シートはさらに幅が広がり、またオットマンも伸びるようになったことで、リビングというより旅客機のファーストクラスのシートさながらである。様々な色に変えられる照明やリアシート用のエンタテイメントシステムも旅客機のようだ。


 


 


 飛行機のファーストクラスが1回乗ると100万円コースであることを考えると、もしかしたら750万円というお値段も決して高くないのかもしれない。ちなみにシートの座り心地は運転席も2列目も表面こそ柔らかいものの、意外と硬めである。


 


 3列目シートは豪華さという点ではもちろん2列目よりは劣るもののアームレストも収納式の日よけもあり、それなりの広さもあるので長時間の乗車も余裕でこなせるのはさすがだ。


 


 


 ラゲッジルームについても期待通りの大きさである。ただ3列目シートの折りたたみなどの使い勝手は、セレナやステップワゴンなどのよくできた2Lクラスミニバンには及ばない。


日常の範囲では非常に滑らかな走り、あくまでも日常の範囲で



 


 今回のマイナーチェンジの目玉の一つが新しいエンジンと8速ATが搭載された3.5LのV6エンジン搭載車だ。もともと以前のV6エンジンもトヨタにしては例外的に気持ち良いエンジンだったが、今回の新エンジンはさらに力強く、スムーズに回る。低回転から高回転まで振動やバラツキを感じさせず、しかし踏み込めば300馬力を超えるパワーで一気に加速する。わざわざ6気筒エンジンを選ぶ価値は、例え燃費が実質7?8km/Lであろうとも、燃料がハイオクガソリンであろうとも、クルマの運転が好きな人には十分感じることができるだろう。


 


 ただ新採用の8速ATには失望した。軽くアクセルを踏んでいるぶんにはリズム良くきれいに段を踏みながら変速するのだが、踏み込んだ時、少し戻した時の反応が悪い。すぐにキックダウンせず妙な引っかかりがあるのは、トヨタのトルコンATの悪しき伝統を踏襲している。100km/hで回転数がわずか1500回転ほどなのは多段化の恩恵を感じるが、せっかくV6エンジンを選ぶ人の期待に沿ったものとは言い難い。


 


 いっぽうハイブリッドモデルの制御の洗練ぶりには感心した。アクセルを少し踏み足した時のトルク感の出し方がとても良く、また戻した時の回生ブレーキの効き方も自然で、つまり街中であればアクセルだけでコントロールできる範囲がとても広い。高速道路の合流などで踏み込んでも、エンジン回転数とスピードの上昇は比較的リニアである。


 


 V6エンジン+8AT車よりもハイブリッド車の方がいわゆる「乗り味」が良かったのは意外だった。燃費計を見る限り街中でも10km/Lを下回ることはなさそうだ。一つだけ注文をつけるとしたらシフトレバーのストロークが長すぎることと節度感が足りないことだろう。このあたりはマツダを見習ってほしいものだ。


 


 足回りはこの第三世代のヴェルファイア&アルファードが「大きな高級車」になるにあたって最も注力した部分だと聞く。トーションビームのリアサスペンションをダブルウイッシュボーンにしたことで、たしかにクルマの動きに落ち着きが出た。ただ、このクルマに期待される乗り心地を実現しているかといえば、まだ十分ではない。

 滑らかな路面なら驚くほど滑らかな乗り心地なのだが、少し荒れた路面に出くわすと細かい振動・上下動・ロードノイズが意外と気になる。タイヤの銘柄が異なる2台とも同じような傾向だったので、足回りやシャシーの責任だろう。継ぎ目など両輪で同時に乗り上げたときに「ドタッ」と大き目の音と床が震えるのも減点対象だ。トーションビームかよ、と手元のメモに残すほど気になった。大きなスライドドア、フラットな床など、ボディ剛性に不利な要素を抱えたミニバンとはいえ、ホンダならもう少しうまく処理してくれそうだ。

 高速道路での明確な揺り戻しはずいぶん抑えられている。ただしそれは欠点ではないという程度であって、素晴らしい乗り心地と言うほどではない。「大きな高級車」を名乗りたいのであれば、もう一段のフラット感の演出が欲しいところだ。ただし室内の静けさは一級品であったことは付け加えておく。


 


 操縦性能についても同じ傾向で、日常で使う範囲であれば素晴らしく滑らかで、トヨタ車とは思えない手応えのしっかりしたステアリングフィールを味わうことができる。そこそこのスピードであればステアリングを切った時の初期ロールスピードも自然だし、ある程度のロール角で止まることも好ましい。このあたりは旧型からの進歩の幅はとても大きい。

 ただし、日常から離れてスピードを上げていくと様相は若干異なってくる。ステアリングの手応えが増えないことと、攻める気持ちでコーナーに入った時に、決めた舵角に対して微妙な修正舵が必要になる点、そしてその微妙な修正舵への反応が悪い点など、まだ改善の余地を感じる。V6エンジン車の場合、前述のようにアクセルに対してATの反応も修正舵の反応も良くないので、一番向いていないのはコーナーが続く高速道路での煽り運転かもしれない。このクルマで高速道路を走るなら巡航速度でのんびり行くほうが似合っている。


最新化された先進安全運転支援装置の出来栄えは上々



 このクルマから第二世代となったトヨタの先進安全運転支援装置「トヨタセーフティセンス」の搭載が始まった。トヨタはけっこう昔からこの手の装置の研究は進めていたし、レクサスLSあたりには実際に搭載していた実績もあるのだが、スバルアイサイトが火をつけた「自動ブレーキムーブメント」には少々乗り遅れていた印象だった。

 これまで普及版「C」と上級用「P」の2つあったセーフティセンスだが、第二世代になって名称は統一されるようだ。軽自動車にすら遅れているコンパクトカーやミニバン用の「セーフティセンスC」は早くアップデートすべきだろう。


 


 新しいセーフティセンスは車線逸脱防止装置(LKA)の認識性がアップしたことを実感できた。低速では白線と白線の間を行き来する悪癖はあるものの、ある程度の速度になれば比較的真ん中を走って修正舵も少ない。意外に手応えのあるステアリングの反力も好印象だ。前車追従機能付きオートクルーズ(ACC)も180km対応になり、0km前後での停止・発進もスムーズだ。スバルほどではないが前車追従性も比較的良い。ただ急な割り込みへの対応が遅く、ハッとすることがあったことは付記しておく。


日本のまどろむような日常に最適な高級車



 


 マイナーチェンジを受けた3代目のヴェルファイアとアルファード、新しい3.5Lエンジン車は8ATの出来に不満が残ったが、逆にハイブリッド車の仕上がりの良さは期待以上だった。街中でも高速道路でも、日本のまったりした交通の流れに乗って走るぶんには運転席も2列目も快適このうえない。しかもかなりいい気分にさせてくれる演出も盛りだくさん、高いプライスタグに見合う満足をオーナーに与えてくれる。

 少し日常から離れると評価が変わってくるのは前述の通りだが、あまり気にすべき部分ではないだろう。多くの善良な人々にとって箱根の山坂道を攻めることも、高速道路の追い越し車線でテールトゥノーズのせめぎ合いをすることも、それは非日常の世界なのだから。



トヨタヴェルファイア&アルファードのオススメグレードはこれ!



2.5Lガソリン車エアロ系ならば高いリセールバリューの期待大


 国産ラージサイズミニバン市場を独占しているのが、トヨタヴェルファイアとアルファード。現行モデルは2015年1月に登場し、2017年12月にビッグマイナーチェンジを行っている。ラージサイズミニバンとしてではなく、現代の高級車として開発されたヴェルファイア&アルファード。その高級車に相応しい安全装備が今回のマイナーチェンジで標準装備されたのが大きな特徴だ。

 搭載されているパワートレインは2.5Lガソリンエンジンと2.5Lガソリン+モーターのハイブリッドシステム。そして今回のマイナーチェンジで、改良が加えられた3.5LV6ガソリンエンジンの3種類。3.5L車のミッションは8速ATへと多段化されている。

 従来はスタンダード系のみに設定されていた豪華仕様のロイヤルラウンジがエアロ仕様にも追加されている。オススメのグレードはリーズナブルで、人気の高い2.5Lガソリンエンジンのエアロ系グレード。快適装備の充実した2.5S Cパッケージ(ヴェルファイアはZ Gエディション)ならば、手放す時のリセールバリューもかなり期待できる。


ヴェルファイア/アルファードグレード一覧表


車名 搭載エンジン 駆動方式 グレード名 価格(円)
ヴェルファイア 2.5Lガソリン FF(2WD) X 8人乗り 3,354,480
4WD 3,603,960
FF(2WD) Z 8人乗り 3,692,520
4WD 3,943,080
FF(2WD) Z 7人乗り 3,735,720
4WD 3,986,280
FF(2WD) Z Aエディション 7人乗り 3,905,280
4WD 4,154,760
FF(2WD) Z Gエディション 7人乗り 4,362,120
4WD 4,611,600
FF(2WD) V 7人乗り 4,185,000
4WD 4,434,480
3.5Lガソリン FF(2WD) VL 7人乗り 5,205,600
4WD 5,400,000
FF(2WD) ZG 7人乗り 4,947,480
4WD 5,140,800
FF(2WD) エグゼクティブラウンジ 7人乗り 7,034,040
4WD 7,227,360
FF(2WD) エグゼクティブラウンジZ 7人乗り 7,183,080
4WD 7,377,480
2.5Lガソリン+モーター 4WD X 8人乗り 4,363,200
X 7人乗り 4,405,320
Z 7人乗り 4,610,520
V 7人乗り 4,975,560
V Lエディション 7人乗り 5,529,600
ZR 7人乗り 5,120,280
XR Gエディション 7人乗り 5,674,320
エグゼクティブラウンジ 7人乗り 7,358,040
エグゼクティブラウンジZ 7人乗り 7,508,160

車名 搭載エンジン 駆動方式 グレード名 価格(円)
アルファード 2.5Lガソリン FF(2WD) X 8人乗り 3,354,480
4WD 3,603,960
FF(2WD) S 8人乗り 3,692,520
4WD 3,943,080
FF(2WD) S 7人乗り 3,735,720
4WD 3,986,280
FF(2WD) S Aパッケージ 7人乗り 3,905,280
4WD 4,154,760
FF(2WD) S Cパッケージ 7人乗り 4,362,120
4WD 4,611,600
FF(2WD) G 7人乗り 4,185,000
4WD 4,434,480
3.5Lガソリン FF(2WD) GF 7人乗り 5,205,600
4WD 5,400,000
FF(2WD) SC 7人乗り 4,947,480
4WD 5,140,800
FF(2WD) エグゼクティブラウンジ 7人乗り 7,034,040
4WD 7,227,360
FF(2WD) エグゼクティブラウンジS 7人乗り 7,183,080
4WD 7,377,480
2.5Lガソリン+モーター 4WD X 8人乗り 4,363,200
X 7人乗り 4,405,320
S 7人乗り 4,610,520
G 7人乗り 4,975,560
G Fパッケージ 7人乗り 5,529,600
SR 7人乗り 5,120,280
SR Cパッケージ 7人乗り 5,674,320
エグゼクティブラウンジ 7人乗り 7,358,040
エグゼクティブラウンジS 7人乗り 7,508,160

トヨタヴェルファイア&アルファードのライバルはこれ!


日産エルグランド - 高い走行性能は魅力だが室内の広さは及ばない



 


 3代目となる現行型日産エルグランドは2010年に登場。元々国産ラージクラスミニバン市場を席捲したのは初代エルグランドだった。しかし現在はヴェルファイアとアルファードに圧倒的な差を付けられている。


 


 現行型エルグランドは駆動方式を従来のFR(後輪駆動)からヴェルファイア&アルファードと同じFFに変更。さらに低重心化と全高を低く抑えることで、走行性能を向上させている。残念ながら、全高を低くしたことにより、走行性能はアルファード/ヴェルファイアを上回ったものの、広い室内空間そして圧倒的な存在感を失ってしまい、後塵を拝するようになった。2014年のマイナーチェンジで外観の変更に加えて、サードシートにスライド機構を追加し、ラゲージスペースを上下方向に拡大に成功。ゴルフバッグを搭載できるようになり、利便性は向上している。

 搭載するエンジンは2.5Lと3.5Lガソリンエンジンの2種類。ハイブリッド車がないこともヴェルファイア&アルファードに大差を付けられている理由の一つだろう。


日産エルグランドスペック

 ボディサイズは全長4945 mm(一部グレードに4975mm、4915mmあり)×全幅1850mm×全高1815mm。搭載するエンジンはレギュラーガソリン仕様の2.5L直列4気筒エンジンとハイオク仕様の3.5V型6気筒エンジンの2種類。

 駆動方式はFFと4WDでミッションはすべてマニュアルモード付CVTが組み合わされる。車両本体価格は250XGの321万3000円〜350ハイウェイスタープレミアムアーバンクロム4WDの583万4160円。売れ筋グレードは250ハイウェイスターSアーバンクロム2WDの367万6320円。


ライバル車スペック


車名 価格(円) ボディサイズ(全長×全幅×全高mm)
トヨタ アルファード2.5S Cパッケージ 4,362,120 4950×1850×1935
日産 エルグランド250ハイウェイスタープレミアム 4,136,400 4945×1850×1815

今回試乗した車はこちら


トヨタ ヴェルファイア 2WD 3500 ZG 7人乗り

総額 5,111,000 円


アルファードハイブリッド 4WD 2500 HYBRID Executive Lounge S 7人乗り

総額 7,318,000 円

ヴェルファイアのグレード一覧はこちら
アルファードのグレード一覧はこちら