人気車種 試乗&ライバルチェックVol.7
トヨタ ランドクルーザープラド
VSランドクルーザー(200系)&パジェロ
長く付き合えるクルマ
車名:トヨタ ランドクルーザープラド
試乗グレード: TZ-G 7人乗り2.8Lディーゼルターボ・6AT・4WD(ホワイトパールクリスタルシャイン)536万3280円(試乗車629万2620円)(税込)
世界的にブームのSUVのなかでトヨタのランドクルーザーシリーズは本格的な悪路走破性を持つクロスカントリー(クロカン)四駆と呼ばれる硬派なジャンルに属するクルマだ。現代的なSUVが採用する(一般的な乗用車と同様の)モノコックシャシーに四輪独立サスペンションの組み合わせではなく、頑丈なラダーフレームと後輪のリジットアクスルを持つことが、ランクルことランドクルーザーを「硬派」と位置付ける理由である。
現在、日本で販売されるランドクルーザーシリーズには、通称200と呼ばれる「ランドクルーザー」とそれより少し小ぶりの「ランドクルーザープラド」の2車種がラインナップされている。ちなみにレクサスブランドで販売される「レクサスLX」は「ランドクルーザー」と基本構造を共有する兄弟車だ。
今回紹介する「ランドクルーザープラド」は2009年にフルモデルチェンジした4代目のモデル。2013年と2017年にマイナーチェンジを受け、外観や環境性能、そして安全性能のアップデートが図られているものの、登場からすでに10年近くが経っている。果たしてその実力は今日の水準に達しているのか、購入検討者には気になるところだろう。
スマートさを取り戻した外観、存在感は相変わらず
昨年の2度目のマイナーチェンジで外観デザインに変更が加えられたプラド。特にフロントまわりはボンネットフードやヘッドライトの形状が変わり、ずいぶんスマートになった。
リアのコンビネーションランプも余計(?)な張り出しが削られ、プラドらしい質実剛健なイメージを取り戻している。
冒頭で「小ぶりなランクル」と書いたものの、それはあくまでランクル200との比較であって、プラドも全長4825mm、全幅1885mm、全高1850mmという巨体の持ち主であり路上での存在感は抜群だ。最近のモダンで都会的なSUVたち、たとえばポルシェカイエンでさえプラドに比べるとコンパクトに見える。大きく見えることもランクルの根強い人気の一つであり、最新のプラドもその伝統に忠実である。
SUVよりもクロカン色の強い内装
サイドステップの助けを借りないと乗り込みにくい高い床もモダンなSUVとは異なる点だ。そして運転席には足をやや投げだし気味に座ることになる。ヘッドクリアランスは十分あるので運転席の高さを上げることは出来るが、そうするとフロントウインドウの上端が気になるし右肘のアームレストも低く感じてしまう。つまり投げだし気味に座るのが「正しい」ポジションなのだろう。
悪路をものともしない走破性と耐久性のためのラダーフレームゆえに仕方ない気もするし、普通じゃないクルマを運転している満足感を得られるメリット(?)もある。ただし先日モデルチェンジを行なった、同じようにラダーフレームを持つメルセデス・ベンツGクラスの着座ポジションは新型も旧型も普通だったことは付け加えておきたい。
最上級グレードだけにインパネセンターの下部に立派な革が貼ってあったり、シートも表面の柔らかいタッチの革だったり、ステアリングなどにウッドが使われているものの、インテリア全体の仕立ては実用車然としている。それはランクルを本来必要としているエリアでの過酷な使用に耐えるためだろうし、それこそタフギアの証しだと好感を持つ人もいるだろう。
2列目シートもきちんと座ろうとすると座面前端が太ももから少し離れ気味になる。ただし足元スペースはさすがに広い。
オットマンなどミニバンの2列目シートのような「もてなし」はないものの、スライド機能やリクライニング機能、カップホルダー付きセンターアームレストなどは備わっているので居心地はなかなかのものだ。
3列目シートはアルファードのような同サイズのミニバンはもちろん、ステップワゴンやノア・ヴォクシーと比べても狭いと言わざるをえない。
足元スペースは2列目のスライドでどうにかなるが、シートが薄いので砂漠はおろか近所の移動以外に大人は耐えられないだろう。
そんな3列目シートだが格納すれば広大なラゲッジスペースが出現する。そしてアルファードにすら付いていない電動式の折り畳み機構もある。
最新化されたパワーユニットの洗練ぶりは驚き
今回、試乗に連れ出したのは最上級グレードのTZ-G、2015年に追加された最新の2.8Lターボディーゼルエンジンを搭載するモデルである。
走り出して驚いたのは、このエンジンの出来の良さだ。軽快な吹き上がりとターボの存在を感じさせない自然なフィーリングが素晴らしい。重たい車体に対してパワーもトルクも必要十分、非常に洗練されている。もちろんディーゼルであることは隠しきれないが、振動も音もよく抑えられている。
国産車にしては珍しく踏みごたえのあるアクセルペダルは悪路で繊細なアクセルワークが求められるクロカン四駆の伝統ということもあるし、オンロードでこの手の大きな車体を持つクルマの動かし方にも合っている。同様に6速ATもトヨタのトルコン式オートマらしく多少ルーズな部分があるが、重たいクルマをスムーズに走らせるにはそのルーズさがいい方に作用している。
懐の深い乗り心地、意外に軽快な身のこなし
乗り心地も望外に良かった。低速時に大きめの段差を越えたときなどにタイヤの大きさ・重さを感じる場面もあるが、全体的にはフレーム構造のおかげか滑らかで懐の深さを感じさせる乗り心地だ。
試乗車にはリアのエアサスに加えてスタビライザーの効力を可変的に制御するKDSS: Kinetic Dynamic Suspension System(キネティック ダイナミック サスペンション システム)が付いており、コンフォート、ノーマル、スポーツと乗り心地を選択できた。結論でいうとノーマルモードが一番この車のキャラクターには合っている。基本的にしなやかな乗り心地ながら揺れの収まりも悪く無い。一方でコンフォートモードは街中に限定した方がいいだろう。確かによりソフトなのだが揺れの収まりが悪いのが気になる。スポーツは明確に引き締まるので山道をハイペースで走るなら良いのだろうけど、このクルマのキャラクターとは少々合っていないかな、と感じた。
ステアリングも滑らかで剛性感の高さを切った瞬間に感じることができる。ある程度のスピードまでであれば信頼感もあり、また意外と軽快な身のこなしをみせる。もちろん欧州プレミアムブランドの快速SUVのようなスポーツ選手の身のこなしではないが、フレーム構造とリアのリジットアクスルを持つことを考えると、オンロードでこれだけ乗用車ライクに走れるのは素直に評価してもいい。
最近はやりの先進安全装備は歩行者対応が昼間のみなど最先端のものでは無いが、いちおう装着されている。前車追従オートクルーズも50km/h以上でないと設定できないが、制御自体はずいぶん洗練されている。車間はあと少し詰められるようにしたほうが後続車をいらつかせたり、割り込まれたりすることが少ないだろう。
副変速機がついていることの意味
このクルマはクロカン四駆らしく副変速機が付いている。そしてダッシュボードの下の方のずいぶん広いスペースにローギアにした時に使うスイッチ類がたくさん配置されている。試しに停止時にニュートラルにしてローギアに切り替えると、ナビ画面が車載カメラに切り変わり、メーター上に黄色い表示灯がたくさん灯って、それだけで日常ではない世界が出現する。
他のクルマがいないことを確かめてから走ってみると、あっという間にエンジンが吹き上がりどんどんギアを変速していくが、スピードの上がり方は恐ろしく遅い。果たしてどれほどの日本のユーザーが副変速機を使うのかは疑問だが、これが求められる市場がいまだ世界中にはあって、本来ランクルはそちら向けのクルマであることを再認識した。
最新のSUVでは得られないもの
今回プラドに試乗する際に3年前に乗った再販されたランクル70のことが頭をよぎった。個人的にはいまでも欲しいと思うことのある70だが、それはクラシカルで濃密な乗り味が「好き」というだけで、冷静にクルマとして「評価」すると話は別だ。60km/hで怪しくなってくる直進性の悪さとか、高速でコーナーに進入する気にならない足回りとか、クルマとしての「偏差値」は低いと言わざるを得ない。
今回のプラドも、同門のレクサスRXに代表される乗用車ベースのモノコックボディと四輪独立サスペンション、前後左右のトルク配分を電子制御する最新SUVに比べると、クルマとしての「偏差値」は当然落ちる。なにしろこいつはいまだに10年、20年と過酷な環境下で使われることも想定しなければならないクルマだから、オンロードを走るためだけなら不要なものがいっぱい付いている。
それでもずいぶんいい意味で乗用車に近づいた。振動や重さなど、不要なクロカンらしさは減って、乗っていて伝わってくる信頼感や実用性は十分残っている。「味の濃さ」でいうと兄貴分のランクル200やレクサスLXのほうがより濃いのだが、プラドは彼らより(相対的にではあるが)身軽で普通に使える印象が強い。
最新SUVの代表格であり、価格的にもプラドと被るレクサスRXは3〜4日借り出したことがあり、現代的で洗練されていて快適なクルマであるのは間違いないけれど、正直すぐに飽きてしまいそうだと思った。それに比べるとプラドは長く付き合えそうな一台である。そして10年乗って手放した後も、新興国で本来の任務(?)が待っているプラドなら下取り価格も期待できそうだ。
トヨタランドクルーザープラドのオススメグレードはこれ!
車名 | 搭載エンジン | 駆動方式 | グレード名 | 価格(円) |
ランドクルーザープラド | 2.7Lガソリン | 4WD | TX 5人乗り | 3,538,080 |
TX 7人乗り | 3,692,520 | |||
TX Lパッケージ 5人乗り | 4,047,840 | |||
TX Lパッケージ 7人乗り | 4,202,280 | |||
2.8Lディーゼル | TX 5人乗り | 4,152,600 | ||
TX 7人乗り | 4,307,040 | |||
TX Lパッケージ 5人乗り | 4,667,760 | |||
TX Lパッケージ 7人乗り | 4,822,200 | |||
TZ-G | 5,363,280 |
パワーと低燃費を両立したディーゼルエンジンがベスト
150系と呼ばれる現行型ランドクルーザープラドは2009年9月に登場。約9年にわたるモデルライフの中で2回の大きなマイナーチェンジを行っている。
2017年9月に行われた2度目のマイナーチェンジで運転支援システム、トヨタセーフティセンスが全車に標準装備された。2.7Lガソリンと2.8Lディーゼルターボの2種類のエンジン。そして多くのグレードで5人乗りと7人乗りを設定するなど幅広いニーズに対応している。
オススメは最大トルク450Nmというパワフルな動力性能と11.2〜11.8km/Lという燃費性能を両立した2.8Lディーゼルターボ車だ。使用する燃料も軽油のため、ランニングコストも抑えることができるのも理由の一つだ。マツダCX-8の登場で、サードシートをもつSUVに注目が集まっているが、元祖はこちら。キネティックダイナミックサスペンションを搭載したTZ-Gならば、どんな路面状況でも抜群の乗り心地を実現する。
トヨタランドクルーザープラドのライバルはこれ!
車名 | 価格(円) | ボディサイズ(全長×全幅×全高mm) |
トヨタ ランドクルーザー200 4.7ZX | 6,836,400 | 4950×1980×1870 |
三菱 パジェロ 3.2DTスーパーエクシード | 4,951,800 | 4900×1875×1870 |
トヨタランドクルーザー(200系)-搭載するエンジンはハイオク仕様のガソリンのみ
日本国内だけでなく、世界各地のランドクルーザーブランドを確立させたフラッグシップモデル。200系と呼ばれる現行型は2007年に登場したロングセラーモデルだ。
国産車の高級SUVの頂点に立つモデルで、クロカン4WDらしく高い悪路走破性実現のため強靱なラダーフレームを採用しているものの、電子制御サスペンションを搭載することで、オンロードにおける高級車のようなソフトな乗り心地も実現している。
搭載されているエンジンは最高出力318psを発生する4.6LV型8気筒のガソリンエンジン。JC08モード燃費は6.7〜6.9km/Lでしかもハイオク仕様だ。乗車定員はGXのみ5人乗りで、3列シート8人乗りが中心。安全装備は全車にトヨタセーフティセンスPが標準装備され、プラドとの差はほとんどない。ボディサイズもプラドに比べて大きくなるが、室内空間の広さや利便性はそれほど差がない。
トヨタランドクルーザー(200系)スペック
ボディサイズは全長4950 mm×全幅1980mm×全高1870mm。搭載するエンジンは4.6LV型8気筒DOHCの1種類。駆動方式は全車4WDのみ。乗車定員はエントリーグレードのGXのみ5人乗りで、その他は8人乗り。新車価格は4.6GXの472万8240円〜4.6ZXの683万6400円となっている。
三菱パジェロ-かつてライバルと呼ばれたモデル
1990年代に起きたクロカン4WDブームをけん引したのが三菱パジェロ。かつてはランドクルーザープラドのライバルと言われていた。現行型パジェロは2006年に登場した4代目。発売当初は5ドアのロングボディと3ドアのショートボディを用意していたが、2017年いっぱいでショートモデルの販売が終了した。
現在でも背面タイヤを採用するなど古き良きクロカン4WDの香りを感じられるモデル。ラダーフレームとモノコックボディを組み合わせたシャーシを使用し、抜群の悪路走破性を誇っている。
エンジンは3Lガソリンと3.2Lディーゼルターボエンジンを用意しているが、組み合わされるトランスミッションが5速ATで、プラドのように洗練されておらず、振動や騒音はかなり大きめ。小刻みなアップデートが行われ4WDの性能は依然高いが、先進の安全装備は最上級グレードが500万円近いにも関わらず、今となっては軽自動車以下の内容だ。
三菱パジェロスペック
ボディサイズ全長4900mm×全幅1875mm×全高1870mm。搭載するエンジンは3.0L V型6気筒SOHCガソリンと3.2L直列4気筒ディーゼルターボの2種類。ミッションは全グレード5速ATを採用し、駆動方式は全車4WD。新車価格は3.0GRの327万7800円から3.2DT スーパーエクシードの495万1800円となっている。